ネタ vol.2013 | ナノ

◎めだ箱×箱学

「この学校に、アイドルがいるだァ!?」
「靖友は興味ないか?行方不明(なでかたふめい)っていう実力派アイドルなんだが」
「ふむ、俺はファンだぞ」
「福ちゃぁん!?ウソォ」
「確か、今年入学してきたのだったな」
「ヒュウ!さすが寿一、そこまでわかってるなら話は早い!見に行かないか?」
「いや、迷惑になるだろうから遠慮する」
「ちょっとくらいなら平気だよ!ほら!」
「‥少しだけなら」

「何を話しているのだ?」
「箱学に入ってきたアイドルを見に行こうと思ってな。尽八も来るか?」
「ふむ、折角だが俺にはファンの子たちがいるから遠慮するぞ」
「そうか」







私は黒神真黒にレベル99まで育てられた、いわばチートアイドルである。あの人はマネジメントの天才なので、私は今の人気を素直に喜べない。
私の《異常性》は《好感触》である。第一印象が人より良いだけの私を育てて、見ただけで応援せざるを得なくしてしまうアイドルにさせた真黒さんは、本物の天才だ。

アイドル養成学校である早乙女学園に通っていたのだが、チートをしていたことに引け目を感じ、自主退学をした。そして今は神奈川県にある箱根学園に通っている。アイドルの活動は数を減らしているが、まだ完全にやめたわけではない。やめたらファンになってくれた人に悪いし、悲しむ人もいるからだ。
そんなことを考えていると、上級生らしき二人組が教室の外に立っているのが見えた。私なんかを見に来ることができるなんて、珍しい人もいるものだと内心驚く。なぜならば、私の数少ないスキルの内の一つである《人払い》を使っているはずだからである。
たまにスキルの効かない人間がいるんだよなあと思いつつも、折角やってきたお客様に失礼だろうと私は席を立った。


「なにか、用ですか」


上級生たちは私が話しかけたことに吃驚したのか、目を丸くしている。わかりやすい人たちだ。


「私を訪ねることが出来たということに敬意を払って要件を聞かせていただきます」
「‥ヒュウ!一目見れたらラッキーだと思っていたけど、まさか話せるなんてな」
「俺は自転車競技部主将の福富寿一だ。気が向いたときにでも見学に来てくれると嬉しい」
「俺も寿一も君のファンなんだ。かっこいいとこ見せたくてね」
「わかりました。では今日の放課後、授業が終わり次第見学に向かわせていただきます」







そして放課後、約束通りに見学に来た私は、野獣と形容すべき獰猛なオーラを放つ男に目をつけられていた。黒神めだかともまた違う、威圧的で野性的オーラ。
クンクンと私に鼻を近づけてにおいを嗅ぐ男はしばらくすると「‥薄気味悪いニオイをしやがる」と呟いた。


「実力と結果がかみ合わねえ。カワイソーな奴だな」


ひどく冷めた目で見つめられ、体がぴしりと強張る。そう憐れまれたのは久しぶりのことで、どう反応したらいいのかわからなかったというのもあるが、一番の理由は、そんなはりぼての自分を見破られたことによる歓喜だった。


「アア、怖くて震えてんのォ?早くみんなのとこ行って守ってもらった方が良いんじゃナァイ?」
「‥‥か」
「ア?」
「お名前、教えていただいてもよろしいでしょうか?」


一拍おいてから、男がわけがわからないという風に顔をゆがめた。
確かにいきなり自分の欠点を指摘されて友好的に接しようという人間は少ないのだろう。

でも、私は違う。それを切望していた。


「‥荒北靖友。おめーはなんて言うんだ?」
「行方不明と申します。良かったら仲良くしていただきたいです、荒北さん」
「行方不明‥?」


どこかで聞いたような名前だ、と荒北は首を傾げた。
すると、そんな荒北に気づいた不明は口を開く。


「テレビに出ていたこともあるので、そこで聞いたのではないでしょうか」
「テレビ‥、‥アア!福ちゃんが今朝言ってた!おめーか!」
「福富さんなら今日私の教室にいらっしゃいましたよ。ご友人でしたか」
「‥おめーの話し方、なんとかなんねぇの?」
「なんとか、とは」
「堅ッ苦しいんだヨ!ですますさえつけてりゃいいんだヨ!」
「‥明日までには完璧にしておきます」
「おめーは機械か!」




20140308

そして荒北の受難は続く(続かない)

mae tsugi

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