ネタ vol.2013 | ナノ

◎狩人→魔法

「君は新入りくん?」
「…君は?」
「ここの先輩。もし君が煩いのが苦手なら僕といるといい」
「なぜ?」
「僕が煩いのを苦手なことを彼らは知っているから」
「君は偉いの?」
「偉くはないけど、強くはあるよ」


そう言って少女は初めて僕の瞳を見た。
それは、僕と同じ真っ赤な瞳。しかし、僕以上の輝きを放つ、緋の色をしていた。





▽組み分けと違う世界




「トム・リドル。スリザリン!」


初めて名前と会った日のことを思い出していたら組み分けが終わっていた。
いつもの癖で名前の隣に座っていたことに内心舌打ちをしながら(ホグワーツでは今までの僕とは違う僕でいたかったのだ。)猫かぶりを続ける。すると、名前のもう片方の席に男が座るのが見えた。そこまではまだ良かった。

男はまるで数年来の親友かのように名前に話しかけたのだ。
あの人見知りが激しく警戒心の強い名前に向かって、だ。

当然僕はその男が冷たくあしらわれるのを想像していた。しかし、違った。


「やあ、名前だね?」
「そういう君は、ヒソカだね?」


今まで何にも興味を示さなかった名前が驚いたように肩を震わせ、涙ぐみながらそう言ったのだ。
それは、数年間ずっと隣にいた僕が初めて見た、とても嬉しそうな笑顔だった。





▽ヒソカと朝食と睡眠




名前と再会した翌日の朝、朝食を摂ろうと歩いていると、ボスンと腰のあたりに衝撃がきた。ずっと前から、それこそ生まれる前から親しんでいるオーラだったので抵抗もせずに「どうしたんだい?」と聞けば、そのオーラの持ち主−−名前はボクの腰に顔を埋めたまま何かを呟く。


「………?」
「…だから、一緒に行こう…?」


その弱々しい言葉と真っ赤な顔で全てを把握したボクはにっこりと笑って「もちろん」と言い、名前の手をとった。恥ずかしがりながらも離さない名前のなんと儚いことか。

そういえば名前はさびしがり屋だったなとハンター試験のことを思い出した。
さびしがり屋と言えば、名前は。


「…夜は大丈夫だったかい?」
「…1週間は寝なくても平気」
「うとうとするくせに」
「それは…」
「女子寮は男子禁制だから、名前がこっちおいで。同室いないし、というよりも追いだしたんだけどね」
「ありがとう、ヒソカ」


再会したときに比べて緋の色がなくなってきたような気がする。
名前は他のクルタ族とは違い、普段から緋の目でいる。その理由はクロロでも説明できていなかった。しかし、恐らく、今こうして薄らいだのを見る限りでは、名前は普段から怒っているだけなのだろう。そうは見えないだけで。


「そういえば、今までは夜はどうしてたの?」
「…まともに寝てないかも」
「授業中に"絶"をして寝たらどう?」
「そうするね、ありがとう」





▽魔法薬学で違う寮とペア




「これ潰しておいて」
「お前さんは?」
「私はこれを切り刻むけど」
「大丈夫か…?女子はこういうの苦手だろ」
「別に。それに、君、ハグリットと言ったっけ?力強そうだから。それとも何、こっちやりたい?」


無表情で虫を切り刻む名字の顔を見て俺は戸惑っていた。
同じ寮であるグリフィンドールの生徒からでさえあまりいい顔をされないので、ましてやスリザリンの生徒であるこの少女の対応はどこかむず痒かった。

名字はホグワーツきっての美男子であるヒソカと仲がいい。そんな高嶺の人間に普通に対応されるなんて。


「…手が進んでないけど、交替しようか?」
「いや、俺みたいな奴に普通に話しかける奴なんて珍しいなあと」
「そう?」
「ましてやグリフィンドールの奴に普通に話すスリザリン生はお前さんくらいだ」
「…それ、誉めてる?」
「もちろんだ!」


そう言って笑った次の瞬間、どこからか勢いよくトランプが飛んできた。それは俺の鼻先を掠り、名前が軽々とキャッチする。持ち主を知っているらしい名前はそのまま他のテーブルへと顔を向けて、笑った。


「ヤキモチなんて」


ヒソカ以外は何が起こったのかさっぱりわからなかった。リドルでさえ。
気付いた瞬間には名前が近くに来ていて、またそれに気付いた瞬間にはすでに名前の足は地面から離れ、重力から解放されたかのように浮かんでいて、ヒソカの両肩に足を乗せて堂々と君臨していた。


「トランプ、返しに来たよ」
「律儀にどうも」


勢いよく投げられたトランプをヒソカはやはりいとも簡単にキャッチした。





▽告白される



「ごめんなさい」


たまたま名前への告白の現場に遭遇してしまい、僕は苛立っていた。ただでさえ、ヒソカという男に名前がへらへらしているのを見て気が立っているというのに。
名前とは一番仲の良いつもりだった。ひどく腹立たしい。


「どうしてだか、聞いてもいい?」
「たぶん、ヒソカよりも大切な人は出来ないと思うから」


−−ヒソカ?

当然、僕の名前が出てくると思っていた。伊達に数年間ずっと隣で過ごしてきたわけではないと。
意味がわからない。




▽ヒソカが牽制するの巻




ヒソカは見た目だけで言えばトム・リドルに勝るとも劣らない。そんなヒソカを一人占めしていると言って差し支えない名前に嫉妬の目がいくのは必然であった。
元より口数が少なく誤解されやすい性格をしていた名前ならなおさら。


「本当に、何様のつもりかしら!」
「金髪に赤い目!気味が悪いわ!」
「孤児院で暮らしていたと聞いたわ。きっと、不気味だから捨てられたんでしょう」


思い思いに言葉を吐き捨てる少女たちは気付かなかった。
後ろからにんまりと笑った美少年が近づいてきていることを。


「−−ねえ、誰の話をしてるんだい?」

「ひ、ヒソカ!」
「あの、違うのよ。信じてちょうだい?」

「何が違うのか、ボクにも解るように説明してもらえるかな?」

「…っ、ごめんなさい!」

「君たちは知らないだろう?ボクがどれだけ名前に執着しているか。名前はボクの獲物だ。もし名前を傷つけたら…殺すよ」


貧しい家で生まれた昔のことを思い出して、ヒソカは静かに怒る。

生まれは関係ない。貧富も関係ない。
ただ強ければ、それでいいのだ。

弱いものに強いものを奪われてしまうのだけは、我慢できない。






20130314


mae tsugi

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