今更だが、俺のフルネームは夜久結弦である。そして、俺には東京に住む従兄弟がいて、俺は今東京に遊びに来ている。


「衛輔お久しぶりー」

「久しぶり。元気?」

「元気よ元気。クロいる?俺クロの髪触るの好きなんだけど」

「あー、研磨の家行けばわかるんじゃない?」

「いいな東京!クロの髪触り放題!」

「ちょっと意味わかんない」


 従兄弟に辛辣な返しをされながらもめげない俺。本当にクロの髪が大好きなのだ。あれが寝癖って言うんだから世の中って不思議だよな。

 トテトテと従兄弟のあとを着いていくと、綺麗な一軒家にたどり着いた。
 俺は長期休みのときはほとんど東京へ遊びに来ているので、ここには何回か来たことがあるけれど、やっぱり都会の家はすごいと思う。雰囲気が違う。


「あ、いらっしゃい…」

「研磨久しぶり、背伸びた?前はもうちょい低かった気がする」

「背筋が伸びたんじゃねーか?」

「クロ!久しぶり!」


 研磨の後ろからひょっこりと顔を覗かせたのは、さきほど話題に上がったクロその人である。
 俺はクロの姿を認めるや否や、シュッと手を伸ばして髪を触る。毎度のことなので誰も驚かない。


「…中に入らない…?」

「ん、そうだな」

「お邪魔しまーす」

「研磨の家相変わらず広いなおい」


 男四人、並んで家の中へ入る。見た目が見た目のおかげか、むさ苦しくはない。研磨はかわいいしクロはかっこいいし衛輔はかわいいしなんなのこのハーレム。
 なあんて思ってるが、二月のあのXデーを経て何個ものチョコレートを渡された俺もかわいいの部類に入るらしい。ありえん。


「研磨の頭プリンになってるよ」

「いつもだろ」

「…結弦、また色変えたの?」

「バレンタインのときに色々と言われた結果こうなった」

「いやでも緑メッシュはねーよ」

「衛輔辛辣。カラーバター緑しか残ってなかったんだよ…」

「…似合ってるよ」

「ありがとう研磨愛してる」

「ちょっと…くっつかないで…」


 研磨が可愛すぎたので抱きつくと嫌な顔をされてしまった。そんな顔も可愛いんだけどね。なんて言ったらまた嫌な顔をされそうだから黙っておく。


「にしても、似てねーなお前ら」

「結弦目つき悪いもんね」

「うっせ!衛輔はクリクリおめめだな!」

「たまに女の子に間違われるけど悪い?」

「プッ」


 …そういえば、まだ彼らに報告していないことがあったんだった。


「そういや俺、バレー部止めたんだわ」

「「「………え?」」」


 三人の声が揃って面白れー。じゃなくて。
 段々と歪んできた三人の表情を見て、これはやばいと焦った。


「あ、でもみんなと練習するのは止めないからな!楽しいし」

「…なら何で止めたの?」

「あー、理由があまりにもセンチメンタルで恥ずかしいから秘密」

「言えよ結弦」

「なにニヤニヤ笑ってんだよクロ!さっきまで微妙な表情してたくせに!」

「なっ、」

「…たぶん、クロは結弦とバレー出来なくなると思ったんじゃないかな」

「おま、研磨…!」

「かわいいなクロ、こっちおいで」

「誰が行くか!」

「…ホント、結弦が来ると賑やかになるねー」


 こんな従兄弟たちが、俺は大好きです。



20130215

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