「牛島選手の気になる選手は誰ですか?」

「気になる人なら夜久結弦です。彼は白鳥沢に欲しかった」

「ライバルでしょうか?」

「いや、大切な人です」


 ――以上、月刊バリボーから抜粋。


「えっとこれどういうことかな結弦クン」

「ウシワカと知り合いだったの?」

「えっ、あ、小学生のときバレンタインにチョコもらいました」


 確か小学生のときにちょいちょい絡んでくる男の子がいたはずだ。小さいときは俺はそれはそれは女顔だったので女子に間違われているのかと思って訂正したが違うようで、結局バレンタインまでもらってしまったのでホワイトデーにクッキーを返した記憶がある。

 それを伝えれば、先輩たちは顔面を蒼白にさせて押し黙ってしまった。


「へ、変なことはされなかったか?」

「普通にバレーして遊んでましたけど‥」

「でも男にチョコって」

「バカ田中!それ以上は言うな!」

「‥若くん女子力高かったからね」

「!?!?」

「俺の分までおにぎり作ってきてくれたし制汗剤はいつも持ってたしお洒落には気を遣ってたみたいだから」

「――お前それ‥」

「まだ覚えててくれたみたいで嬉しいな」

「大切な人って書かれてんぞ」

「若くんいつも俺のこと大切って言ってたから女の子びっくりしてたなあ」

「今俺たちもびっくりしてるんですけど」

「いつも学校の帰りに公園で遊んでました」

「お前のスルースキルにびっくりだよ」


 月刊バリボーから視線をあげてみると、澤村先輩がのぞきこんできたので、体勢を少しずらした。


「ま、これぞまさに“エース!”って感じだよなァ」


 東峰先輩の方を向きながら言うと、東峰先輩は「オイなんでこっち見てる!」と情けなく言った。そうだよ見た目だけワイルドだからだよ。
 菅原先輩と田中先輩は影山をいじっている。
 “本物”は雑誌を凝視し、「これを倒さないと音駒とは戦えない」と呟いた。ばかか。


「白鳥沢だけが強い訳じゃないし、白鳥沢だけ気にして他のチームに負けたら意味ないっしょ」

「そうだぞ日向。今年は四強の他にも強敵がいる」


 烏養コーチが資料を取り出して説明を始める。

 守りと連携に優れた和久谷南。
 “鉄壁”の一言に尽きる伊達工業。
 総合力では県内トップ選手の及川徹率いる青葉城西。
 超高校級エース牛島若利擁する王者白鳥沢。

 以上が要注意校らしい。


「――とまあこの辺が“俺的今年の四強”だ。と言ってみたものの、上ばっか見てると足掬われることになる。大会に出て来る以上、負けに来るチームなんか居ねえ。全員勝ちに来るんだ。俺達が必死こいて練習してる間は当然他の連中も必死こいて練習してる。弱小だろうが強豪だろうが勝つつもりの奴等はな。それ忘れんなよ。

――そんで、そいつらの誰にも、もう、“飛べない烏”なんて呼ばせんな」


 あス!!

 体育館にやる気のある返事が響いた。俺はこの中で勝ちにいくのだ。そう考えると少し気分が高揚した。

 そこへ、騒がしい足音が入り込んできた。武田先生だ。どうやらインハイ予選の組み合わせがでたらしい。それをのぞき込むと、俺は言葉を失った。


「――及川先輩‥」


 シード校は、青葉城西だった。



20140227

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