結果は俺たちの勝ちだった。後味の悪い試合たになってはしまったが、勝ったことは純粋に嬉しかった。それに、月島と山口に頼られたことも嬉しかった。

 飛雄と“本物”はお互いのチームワークを認められたらしく、無事に入部することができたらしい。それは純粋に喜ばしいことだ。


「結弦、何黄昏れてんのさ」

「ん、なんでもない」

「…なら良いけど」


 いつの間にか「なんでもない」が口癖になってしまった。他人を頼らなくなった。
 俺は、及川先輩みたいになりたかったから。
 及川先輩は俺から見たら完璧だ。ずっとあこがれていたし、それは今も変わらない。及川先輩は完璧だからあんなにたくさんの人に囲まれて慕われているに違いないのだ。


「…そういえば、今度青葉城西と練習試合をするんだけど、結弦は観に来る?たぶんギャラリーが解放されてると思うよ」

「青葉城西…?」

「嫌だったら構わないけどね」

「いや、行く。超行く」

「本当?」

「おうおう。俺さ、青葉城西と烏野で迷ったんだよね」

「進学?」

「そ。だけど俺、青葉城西のブレザーもジャージも似合わないからここにした」

「何でも似合いそうだけどね、結弦は」

「またまたー。俺、明るい色は苦手なんだよ」

「…?」


 訝しげに眉をひそめる月島に向かってにんまりと笑う。
 月島は、自分の知らないことを話されるのが嫌いらしい。というよりも、プライドが高いと言うべきか。


「俺がね、髪の毛をヘンな色に染めるのと、同じ理由」

「………?お洒落のためじゃないの?」

「ぶっぶー!正解は、月島と俺がもっと仲良くなったら教えてあげる」

「今じゃダメなわけ?」

「だーめ」


 そこまで長い付き合いでもないのに土足で心のやわい部分に踏み入れられるのはこわい。
 また、“あのとき”の二の舞にだけはなりたくないのだ。

 俺が明るい色が苦手なのは、そのまま光に薄められて消えてしまいそうだから。

 こんなこと言ったら、お前、笑うだろう。
 もしかしたらそのまま離れて消えてしまうだろう。

 ーー俺は、それがどうしようもなくこわい。こわいんだ。



20130223

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