中編 | ナノ


「バニーちゃんバニーちゃん」
「僕はバーナビーです」
「バーナビー、今夜泊めてくれない?」


拝みながらそれを言えば、バーナビーはぱちくりと目を瞬かせ、呆れたようにため息を吐いた。


「スカイハイはどうしたんです?」


喧嘩をしたなら早く仲直りでもしてください。という副音声まで聞こえてきそうだ。だが、私は喧嘩をしたわけじゃない。もっとどろどろしたものだよ。


「別れた」
「………は?」


信じられない。顔がそう物語っていた。
ヒーローたちは私たちがどんなに仲が良かったか知っていたから、バーナビーがそんな顔をするのも当たり前なのかもしれない。


「とりあえず今日は泊めてあげますから、ちゃんと寝てくださいね」
「そんなこと言わないで語ろうぜー。聞きたいこと、ないの?」


ニヤニヤしながらバーナビーを窺えば、しばらくの沈黙の後に「わかりましたよ」とため息混じりの返事が聞こえた。
バーナビーが私の頼みを断ったことなどない。私、バーナビーのそういうとこ、好きだよ。

バーナビーがソファーでワインを転がしているのを横目で見ながら私はフローリングに座り込んだ。


「…で、どうしたんです」
「スカイハイなんて嫌いだよ」
「なぜ?」


酔いが回っていたせいか、普段では言えない言葉が口を出た。


「誰にでも優しいヒーローの中のヒーローなんて、大嫌い」
「………」
「私にだけ優しければ良かったのに」


私だけのキース。スカイハイ。

わかってます、これは薄汚い独占欲。
でも、どうかこの愛に免じて許してほしい。



20120611
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