「……!?!?」 別れようかと告げれば訳がわからないと言いたげにキースは狼狽えた。 ふふ、悪くない。 ふと思ってしまったのだ。 キースの中で永遠になるのも悪くないと。 私のことを忘れられなくして、優しく痛め付けるの。 ああ、なんて、ぞくぞくする。 私はずっと永遠に憧れていた。 人間の希薄さに絶望していたのだ。笑顔で接しておきながら、裏で陰湿な行為をしていつかは忘れる。 人に忘れられることはとても恐ろしい。何故なら私は人間として生きることを人と関わることと定義しているからだ。 つまりキースにとって忘れられることのない人になれば、なることができれば、私はまた再び人を信じることが出来るような気がして止まないのだ。 「自分を嫌いな人はどんなに愛されてもそれが苦痛にしかならないんだ。ねえ、私は自分が嫌いだから私の分まで私を好いてね」 「別れるとはどういうことだ!ちゃんと説明してくれ!」 「キースと付き合ってると私の心がつらいから別れようってこと。我が儘でごめんね」 ちゃんと笑えてるといいけど、どうだろうな。きっと不細工なんだろうな。可愛くないし。 「私、キースを幸せに出来る自信ないから」 「私は君といるだけで幸せだ」 「そんなの嘘。私に飽きたらまた別の人を好きになるくせに」 「そんなことないぞ!私が好きなのは名前だけだ!」 「ふふ、嘘が上手だね」 悲痛に歪んだキースの顔が可笑しくてまた笑った。 20110705 prev next back |