中編 | ナノ


一人は嫌よ、寂しいもの。でも、見ただけで私を否定してくるような人間とは一緒にいたくない。
でも貴方は人間でも私を否定しないでくれた。
愛してる!愛してる!だから私をもっと見て!愛してちょうだい!

――人間なんかに貴方を盗らせなんかしないわ。





どうかわたしの五感の及ばぬところで





「あ、起きました?」
「アナタは………まだ名前聞いてなかったわね。なんて云うの?アタシはギャリーって云うの、よろしく」
「名前、と呼ばれていました。ギャリーさん、」
「堅苦しくて好きじゃないわ、ギャリーって呼んで」


そう言って柔らかく微笑む貴方はやっぱり綺麗で、ずっと一緒にいたいと思った。

急にギャリーが鋭い表情になったので私も周りに注意してみると、右の方から足音が聞こえてきた。
ギャリーは警戒しているみたいだけど、私は出来なかった。作品だったとしても私には逆らえないはずだし、人間だったとしてもこの空間では私にはなんの脅威にもならない。


「アラ、まだ人がいたの?またずいぶんと小さい子ね」
「え…」
「警戒しなくてもいいわ。アタシたちもアナタと一緒よ」


ギャリーに微笑まれているあの子が憎い。イヴと云った少女は私にも笑いかけたが、私はただ俯くだけだった。


イヴはとても逞しい子だった。
何度も私とギャリーを助けてくれた。(私には必要ないのに。)ギャリーがあの子に心を開くのは、もはや当然、なのだろう。
何回も何回も死にそうになった。何回も何回も生き延びた。薔薇がない私を怪訝そうな目が襲ったけれど、白い薔薇を見つけてからは止んだ。途中、メアリーという"作品"も同行することになったが、何故か私に気づくことはなかった。――《最果ての少女》はゲルテナの作品なら誰でも知っているはずなのに――しかし、それ以降もどうやらギャリーは私を怪しんでいるようだ。

私はただギャリーと一緒にいたいだけなのに。
なんでわかってくれないの。



▼▽▼



「アナタたち、これ本当にかわいいと思うの?」


兎の置物がたくさん並んでいる部屋で、ギャリーが言った。イヴとメアリーはそろって頷くと、ギャリーは信じられない、という顔をする。この中でマトモなのはギャリーだけ。兎の置物なんてなくて、本当はたくさんのお人形がこっちを向いてるだけのお部屋。


「ふふ、緑の子が気になりますね」
「ホントだ!一つだけ色が違うね!行ってみ………きゃっ!」
「ちょっと!大丈夫、イヴ?」


いやだいやだいやだ!!!私が行けば良かった私が心配されれば良かった!なんたる不覚!もうダメだよ、私、我慢できない。


「あ、鍵だ!中に鍵が入ってたわ!」
「とりあえず一回ここを出ましょ」


ギャリーの言葉で部屋から出ると、私はさりげなく壁に手をついた。

――いっしょにあそぼう?



20120602
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