翌日の朝刊を見て私は笑った。どこの新聞も羽島幽平女性助ける!みたいな記事ばかり書いている。幽くんすごいなあ。男の顔もばっちり載っている。 ちなみに中野さんにはストーカーは撃退したので契約は終了しますとメールを入れておいた。 中野さん、ねえ。臨也にベタベタしてないで自殺でも何でもいいから死んでくれないかな。 「幽くんはどう思う?」 「僕は別に何とも」 「冷たいなあ」 「そういうことは兄にでも聞いてください」 「あはは、幽くんだからこそ言えるんだよ」 「………」 「何だかんだで猫被ってないの、幽くんの前だけだしね。新羅くんでさえ私の本音知らないもん」 「名前さんなら他にも受け入れてくれる人なんていくらでもいるでしょう」 「いないよ。私はずっと1人だったから。みんな上部だけ」 「臨也さんや兄に失礼です」 「だって本当のことだもん。皮を1枚剥いだらみんなさよなら。今までだってそうだった。友達はすぐにいなくなった」 「じゃあ僕は?」 「幽くんは感情を知らないから、いいの。私がどういう人間であれ、嫌いになったりしないでしょう?そもそも君は人を嫌いになるようなタイプじゃあない。その点に於いては私、幽くんに絶対的な信頼をおいているんだよ」 「…ありがとうございます」 表情が乏しい幽くんだが、長年仲良くしてきた私は段々表情の変化がわかるようになってきた。幽くんは今喜んでいる。 臨也だって静雄だって私の本当の考えを知っているわけではないから。知ったら嫌われてしまうかもしれないから。 無理をしないで気楽にいれるのは今のところ幽くんだけだし、これからもこれは変わることはないのだろう。 ピピピ。 私の携帯が鳴る。臨也からだ。電話をとると「今誰といるの?」だと。ふふ、見当などとうについているくせに。 「今幽くんと新宿のホテルにいるよ」 そうだ、結局久しぶりにあったんだからとホテルに泊まって色々と話したのだ。もちろんいやらしいことは何もしていない。 幽くんには聖辺さんがいるから。 もやもやする。 「…ホテル?」 「うん」 臨也の聞きたいことはわかっているけれど、私は何も知らないふりをして応答した。 試して試して試して試して試して試して試して試して試して試して試して試して試して試して試して試さないと私は人を信用できないのだ。 途中で相手が耐えきれなくなったら遠慮なく私から離れればいいと思っていた。 でも。 「…君を好きでいるのはもう疲れたよ」 こうして本当に離れていかれると、ちょっとつらい。 20110821 prev next back |