「君は相変わらず悪趣味なことしてるね」 「あっは、新羅くんこそー。私はただ遊びに来ただけだよ」 出してもらったお茶を飲みながら私は新羅くんとお話している。新羅くんとは長い入院生活で出会ったやぶ医者「誰がやぶ医者だって?」医者だ。腕は確かなんだが中身がなによりも残念。見た目も悪くないのに。学生時代に新羅くんに想いを寄せていた女の子を私は何人も知っている。よく相談に乗るふりをしながら内心嘲笑っていたものだ。ムダムダ、新羅くんには化け物の恋人がいるんだから。でも表には微塵も出さず、気まぐれに新羅くんの情報をあげた。彼女たちは今はどうしているだろうか、なんて。 「臨也をあまり煽らないでくれない?静雄も。宥めるのは僕なんだからさ」 「別に大したことないでしょ?二人ともとてもおとなしいのだから」 「君の前だけね」 うーん、私は何がしたいんだろう。 臨也にどうしてほしい?静雄にどうしてほしい?わからない。わからないんだ。 確かに今はそこそこ幸せだと思うが、何か物足りない。何かが足りない。かつてはあったものの気がするのだけれど。 「ところで君は池袋に何をしに来たんだい?」 「池袋は第二のふるさとだよ。だから、帰ってきたの」 「京都でそのまま死んでくれると思ったんだけどね」 「京都は好きだけど池袋が一番だね。人間のどろどろしたところがよぉく見える」 「ホント悪趣味。まるで臨也だ」 「ふふ、違うよ。臨也が私に似たんだよ」 20110820 prev next back |