家に帰ると静雄が臨也との関係について聞いてきた。当たり前か。私は今さら隠さなくてもいいかな、と静雄に全てを話した。あの頃は愚かだったのだ、お互いに。 それにしても、臨也ったら他の女の子を侍らせているだなんて、私をどうしたいのだろう。 私の顔がよほど歪んでいたのか静雄に引かれた。えげつない…ってどんな表現よ。 「んで、手前はノミ蟲のこと好きなのかよ…?」 静雄の気持ちは知っているから私はにっこりと微笑んで「もう好きじゃないよ」と言う。これが君の欲しかった答えでしょう? 私は自分が歪んでいると自覚している。臨也といると特に痛いほど思い知らされる。臨也は痛いほど私に真っ直ぐだから。 だから、自分が醜く見える。 「静雄は何が心配?」 「手前がノミ蟲に嵌められるんじゃないかってな」 「うーん」 からからと笑った私を懸命に理解しようとする静雄。無理だよ、誰も私を理解することなんて出来やしない。私は何にも囚われない。私は何にも惑わされない。…私1人の世界の完成だ。 「臨也が私を嵌めるなんてこと、あり得ないよ」 「でも……」 「出来ないからこその折原臨也なんだから」 私に関しては特に臆病な君、昔から変わらない君。そろそろ行動を起こしたらどうだい?私ももう待ちわびたよ。 平和島静雄という着火剤はもう使っただろう、いつまで燻っているつもりなのだろうか。私はいつでも準備は出来ているというのに。 まだ、足りないか。 あの臆病者に火を点けるには。 「手前、好きじゃないなんて言う割にはノミ蟲のこと知ったような口聞くじゃねーか」 「おや、嫉妬かな?彼氏にでもなったつもり?」 「…チッ」 私は気に入っている人間に対して攻撃的になる癖がある。静雄も私もそれに甘んじているだけだ。何もわかっちゃいない。 そうだ、私も未だに折原臨也のことが好きなのだ。だが、これは歪んでいる。所有欲としての愛。それでもいいと君は笑うだろうか? 私は携帯を開き、とある人物に電話をした。 「もしもし、新羅くん?」 「…うわ、君か…」 「相変わらず失礼な奴だな」 受話器の向こうから盛大なため息が聞こえた。 20110815 prev next back |