「ジャック、紅茶淹れてきて」 「完全に俺お前のパシりじゃねーかよ」 「いいじゃない、ここ、楽しいんでしょ?」 「まあな…。つか敬語使わないんだな」 「敬語は言葉の癖を隠すのにちょうどいいからね、ヒーローやってるときだけ。身バレしたくないし」 淹れたての紅茶を飲みながら優雅に話す名前にジャックは苦笑した。最初に会ったときも大体こんな感じだった。常に含み笑いをしているような。常に余裕を持っているような。 確かに、名前にとってヒーローとして戦うことは余裕なのだろう。どんなに強いネクストでも名前にかかれば一瞬でやられる。 彼女曰く、「私は名実共に最強だからね。どんな強いヒールも総て私の強さを引き立てる雑魚にしかならないよ」実際その通りだろうと思った。 ――じゃあスカイハイは? スカイハイなら名前を負かすことが出来るかもしれない。 俺はそう思い、スカイハイを探した。ポイントではスカイハイがずっと一位だ。もしかしたら。 「それは無理だよジャック君。彼女は極力ポイントをゲットしないように気を配っているんだ。カメラのない場所を狙っている。彼女の能力はダイナミックなものではないだろう?彼女のポイントを総て合計したら恐らく私だけでなく他のヒーローたちのポイントを会わせても追い付かないよ」 ダメだった。彼女はあまりにもチートすぎた。一体どういうことなんだ、ヒーロー全員のポイントを足しても届かないって。ありえない。確かに名前は強い。だが、いくらなんでもそこまではいかないだろう。 「もし名前が敵になったらあんた、どうする?」 最後の確認として聞いてみた。 「そんなこと、考えるだけでも寒気がするよ。生きた心地がしない。彼女が敵に回ったら、私たちはあっという間だろう」 「――…ああ、」 彼女がつまらなくなったら、この環境に飽きたら、きっとここは潰されてしまうだろう。その前になんとかしなければ。 「(仲間にならなければ良かった)」 もちろん嘘だ。 「噂をすれば、ほら。名前だ」 「おや、珍しい組み合わせだね。こんにちはスカイハイ。余計なことは話していないだろうね?」 「も、もちろんだとも!」 「………」 嘘を吐けない人っているよね。 「私の素性はあまり知られない方が良いからね。信用してるよ」 相変わらず言葉を選ぶのがうまい。信用という重しで相手を縛り付けるなんて、策士すぎる。そこに信頼を使わないところもまた。 そんな彼女に惹かれたのは間違いなく自分なのだけど。 20110716 prev next back |