中編 | ナノ


「そんなに文句があるなら別れろよ」


そう吐き捨てるように言ったのがたったの3分前。俺はようやく頬にじんじんとする痛みを覚えた。

だから女は嫌いなんだ。夢見がちで自分勝手。
それなら関わらなければいいとよく言われるが、そうしなければ俺は壊れてしまうような気がして。

家とも相容れることはなく、学校でもこれだ。嫌になってしまう。

耐えきれずに舌打ちをした瞬間、ひどく楽しそうな声が聞こえてきた。
女のくせに耳にすんなりと入り込むソプラノに、自然と反応してしまう。


「またやってる。シリウスは暇なの?」
「うっせ。お前こそ」
「わたしは別に試験とかどうでもいいから暇かな」
「…お前、そんなに成績良かったか?」
「ううん。落ちても構わないからどうでもいいの」
「は?」
「落ちたらねえ、ルシウス先輩が養ってくれるの」
「………は?」
「レギュラスも構ってくれるんだって」


それなら良いかなあって思うんだあ、と、ほわほわと嬉しそうに言ってみせる彼女に嘘はないようだ。しかし、一体どういうことなのだろう。考えてみると、確かに彼女はスリザリンに贔屓されているように感じられた。


「…お前はそれで良いのか?」
「え、うん。もちろん。駄目?」


邪心の欠片もない眼差しを向けられてたじろいでしまう。

良くないのは、俺。
本命には手が出せない悪い癖。



20121028
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