中編 | ナノ


名前はヒーローだ。バーナビーと同期で、しかも二人ともものすごく有能。
しかし、強さの面で言えば名前の方が遥かに上で、遥かに残酷だ。

モノクロームパレードのネクスト、それは森羅万象を操ることが出来る能力。そしてもう一つ――これこそが彼女の恐るべき能力――人の命を奪ったり与えたり出来る能力。
この内一つだけでも恐ろしいというのに、一体運命は何を間違ってしまったのだろうか。


「異端だと畏れられて隔離されて敵視される、君もそのような経験をしなかったわけではないのでしょう?君は痛みを知っている。だからネクストをこんなことに使える権利を持っているのでしょう。でも、で?それをしたところで、恨みを晴らしたところで、あなたは一体どうなるんです?1人になるしかないでしょう?人間は、1人では生きていけませんよ?情人なら私でも可能ですが、人間が求める本能的なものはそれではありません。痛みを知っているからこそ、君は優しくなるべきだった。今からでも遅くはありません、ヒーローになりませんか?私ほどではないと言え、君は強い。ねえ、私は君が気に入ったよ。仲間になろう?」


駆けつけてみた事件を起こした犯人である少年を見込んで、少し首を傾げて勧誘してみた。


「だが断る!今さら仲間になろうなんて、図々しい」


一瞬ジョジョネタかと思ったがどうやら彼は大真面目らしい。
くすりときたが、笑ってはいけない。こちらも大真面目に返してみる。


「君は一人が嫌いなんじゃないのかな?大丈夫だよ、この事件については私がうまくやっておくからさ。なんなら私のパートナーになる?いいよー、最強のヒーローモノクロームパレードのパートナー。誰もが羨むような地位だよ?君はそれを得る最初で最後のチャンスを掴んだんだよ?見逃す手はないと思うけどなあ。君なら私のパートナーにふさわしいと思ったんだけどなあ、残念だなあ」


淡々と言っていけば、少年は何かを呟いた。なぁに?よく聞こえない。にやにやしながら聞けば、少年は「わかった」とだけ言った。ああ、でも、まだダメだ。


「何が、わかったの?」
「………」
「"わかった"だけじゃあわからないなあ。SVOを明らかにして言ってごらん?」
「僕はあなたのパートナーになります。これでいい!?」
「うん、合格。君の名前は?」
「ジャック。水を操るネクストだけど、空気中の水蒸気も操ることも可能だよ」
「…ふうん、いい能力持ってるじゃない。社長に君のことを伝えてくるからついてきて」
「(この人自由すぎる…)」


もちろん私は貴重な人材だから大抵の要求は通るわけで、ジャックも無事ヒーローとして使われるようになりました。

次の日の新聞に"モノクロームパレードにパートナー!?謎の少年の正体は一体!?"なんて見出しがついたのを知るのは少し先の話。



20110713
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