◎的場さんと縁多き子
新しい彼氏ができただの、バージン卒業しちゃっただの、好きな人に彼女がいただの、高校生活はつまらないことばかりだ。とか言う私にも実は好きな人がいたりするが、そんなつまらないやつらの仲間入りをするのは勘弁してほしいので誰にも言ったことがない。今どき運命感じちゃうなんてことも考えてないので多分このまま思いを伝えることもなくこの恋は終わるのだろう。
放課後、コンビニでお気に入りのミルクティーを買い、私は公園へ向かった。
的場静司くん。私は彼のことが好きだ。同じクラスになって初めて彼を見て、何かが胸にきたのだ。彼は学校を休みがちなので彼が休みの日はつまらない。
柔らかい物腰に見え隠れする鋭い眼光に私は恋をした。なんと不毛な恋なのだろう。
「お前もそう思うかい?ニャン公」
「だーかーら、私は斑という立派な名前が!」
「まっちゃん」
「変なアダ名をつけるな…………ムム?」
「まっちゃんどうしたの………あ、的場くん」
今日は素敵な日だ。ニャン公とも遊べたし的場くんとも会えた。
的場くんの私服がダサいと思ったことは秘密にしておこう。いやしかしこのご時世に番傘はない。まあどんな的場くんでも好きだけど。
的場くんは私とニャン公を交互に見ると、「名字さんはこの妖怪とどういう関係で?」と言う。妖怪?不思議に思いニャン公を見ると、気まずそうに目をそらされた。猫の癖に随分と太ってるなと思ったけど、そういうことだったのか。
「私とニャン公はお友達だよ。的場くんはニャン公と知り合いなの?」
「いえ、知り合いという訳では。そういえば名字さんとこうしてお話するのは初めてですね」
「そうだね、的場くんとあまり接点ないし。それより的場くんが私のこと知っててくれてたなんて意外」
「クラスメートの名前くらいは覚えていますよ」
「学校あまり来てないのにもう覚えたなんてすごいね。私、まだ男子の名前覚えてないよ」
「でもおれの名前、」
「的場くんは一番最初に覚えた。不思議なひとだから」
「不思議って…」
苦笑した的場くんに慌てて「悪い意味じゃないよ」と否定した。どきどき。高校生活で一番充実した日だと思う。どきどき。心臓がうるさい。
そういえばニャン公がしゃべってないなと思いニャン公を見ると、今までにない警戒心をむき出しにした目をしていた。再び的場くんを見ると、的場くんは困ったように笑っていた。
「ニャン公、どうしたの?」
「こいつ、とても嫌な気がするぞ。私は帰る」
「的場くんに失礼でしょ。…ん?ああ。的場くん、妖怪退治をしてる人なの?」
聞いてみれば、的場くんは驚いたのか目を軽く見開く。どうやら当たりだったらしく、私は1人納得した。
「どうしてわかったんです?」
「私のお友達に名取さんって妖怪退治してる人がいるから、もしかしたらって。でも、ごめんね?ニャン公は退治されちゃ困る」
「名取ですか…聞いた名だ。ああ、安心してください。今のところその猫を祓うつもりはありませんので」
「名取さんのことも知ってるの?へえ、何か縁でもあるのかな?」
「おれとしては、名字さんの方が不思議ですね。あなたの周りには面白いものが集まるらしい。どうです、連絡先でも交換しません?」
「え、いいの?」
「もちろんです。これからもよろしくお願いしますね、名字さん」
的場さんかわいいよハアハアぺろぺろちゅっちゅくんかくんかしたい
mae tsugi
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