◎戯言→狩人
わたしは泣く子も黙る玖渚機関の直系血族である。玖渚直を兄に持ち玖渚友を妹に持つわたしの名は玖渚名前。だから、わたしは今まで普通よりもかなり良い暮らしをしていたし、間違ってもこんな退廃的なところへ行くようなことはなかったはずだ。
「……と言うか、ここはどこ」
唖然としながら呟いたが、誰も答えてはくれなかった。まず、ここにわたし以外の人間などいなかった。
ええと、何でこんなことになったんだろう。
おかしなことに、直前の記憶がなかった。
そして、おかしなことはまだあった。目の前に積み上がるゴミの山にあるゴミに書かれてあった文字は明らかに日本語ではない。と言うよりも見たことがない文字だ。わたしの知識を総動員してわからなかったのだから、本当に見たことのない文字なのだろう。
……いや、あった。ただし、マンガの中でだが。
「いやいやいやいやいやいや」
ないない、トリップなんてまさか。わたしったら記憶違いなんてらしくもないことしちゃって恥ずかしいなあハハハ。
そう笑い飛ばそうとしたのだが、背後から迫る殺気に思わず顔が引き吊った。
「やあ」
「オマエ誰ね。見たことない顔よ」
「はじめましてだからそうだろうね。君こそ誰?」
「オマエに名乗る義理ないね。ささと死ぬよ」
元から細い目をさらに細めると、彼はわたしに襲いかかってきた。ただ、襲いかかる相手が悪かったというか、毎日のように出夢や真心の相手をしているわたしにとって彼を倒すことなど赤子の手を捻ることと一緒で。
「ダメじゃないか、いきなり襲いかかってきたりしちゃ」
一瞬で捩じ伏せられたという事実に彼は納得出来ていないようだった。
「別に弱いもの苛めをする趣味なんてないから安心してよ。わたしは君に危害を加えるつもりはないからさ」
20111001
mae tsugi
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