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◎サバイバル演習

「名は名前。好きなものも嫌いなものも趣味も将来の夢も要らない。」




 そう自己紹介した翌日、つまり今日。担当上忍であるカカシ先生によるサバイバル演習が行われるらしい。朝食を抜いてこいとのことだったのできちんと抜いてきた。毒を摂取しない朝は初めてだったのだが、まあ、1日くらい抜いても平気だろう。
 そして、待ち合わせ時刻から大幅に遅れてよやくカカシ先生がやってきた。ちなみに悪びれた様子は見られない。その図太さは感服に値すると思う。

 カカシ先生が到着したことにより、ようやく、ようやくサバイバル演習の詳しい説明がされた。
 ようやくすると、タイムアップまでにカカシ先生の付けている鈴を取れば合格らしい。しかし、班員が4人であることに対して鈴は3つしかない。つまり、1人分鈴が足りない、ということだ。

「ちょっと名前、そんな動きづらそうな服着て…!私とサスケくんの足を引っ張ったら承知しないんだからね!」
「なんのこと?」
「そのスカートとブーツ!サスケくんがいるからって意識するのやめたら?」

 言われてわたしの服を見ると、ワイシャツに長いひらひらとしたスカート、そしてヒールの高いブーツが目に入る。

「…スカートとブーツは禁止、なんて言われませんでしたが。それに、サクラに服装のことで
とやかく言われる覚えはありません。足を引っ張るのはどっちでしょうね?」
「アカデミーの成績は私の方が良かったわ!」

 サクラがそう叫んだ瞬間、サスケが間に割り込んだ。いい加減にしろ、と低い声で言うと、カカシ先生がやれやれとでも言いたげに眉を下げた。

「それじゃあ、スタート。 」










 さて、隠れたは良いものの、このサバイバル演習の狙いが解らない以上は迂闊に動いても意味がない。わたしたちはアカデミーを卒業したばかりであるということを踏まえた上でのこの演習ならば、カカシ先生は手加減をするはずである。なぜなら、カカシ先生はあくまでも上忍。下忍であるわたしたちが適うことは理論上は有り得ない。しかし、ナルトとカカシ先生が戦っているところを見る限りでは、本を片手に持っていると言ってもナルトに手加減をしてやろうという意思は感じられない。
 つまり、この演習の目的は鈴を取らせることにはない?
 いや、わたしは何か見落としている?

「ああ、解りました。」

 ソンナモノ、縁がなかったから考えたこともなかった。
 わたしは木の上の陰でにやりと笑った。気づいてしまえば簡単なことだ。それゆえの、超難関試験。

 いやしかし、気づいたとしても、わたしにはソレは難しい。ならば、わたしが合格するにはどうしたら良いか。

「や、名前。」
「サスケでもダメでしたか。」
「まーね。」
「でしょうね。」

 わたしの含みのある言い方にカカシ先生は「どうしてそう思ったの?」と訊く。

「だって、無理でしょう。ーーチームワーク、なんて。」

 チームワークという単語を聞いた瞬間カカシ先生は目を見開いた。そして、次の瞬間にはもういつもの笑顔を貼り付けて「バレちゃったか。」なんて言う。食えない人だ。

「でも、それでいくとわたしも不合格ということになっちゃうんですよね。ここまで来てそれはあんまりじゃないですか。」
「そうだね。でも残念だけど、アカデミーに戻ってやり直せば?」
「ならば、チームワークなんて必要ないと思えるくらいの強さで圧倒すれば、もしかしたらって思うんですよ。」
「具体的にはどうするの?」
「どうしましょうか。ここは分かり易く体術でいきましょうかね。」

 言い終わると同時に足を動かす。暗殺術の基本、肢曲である。カカシ先生が戸惑った隙を突いて背後から回し蹴りを入れる。しかし、ギリギリかわされてしまったために大したダメージを与えることは出来なかった。残念。

「なら少しだけ人体操作でも。」

 ビキリと音をたてて変形したわたしの指先を見てカカシ先生の笑顔が引きつった。

「名前、ただの戦争孤児ってわけじゃないでしょ。」
「おしゃべりとは、余裕ですねえ。」
「ねえ、なんでそんな服なのにそこまで動けるの?」
「1つ、教えて差し上げましょう。敵がゆったりとした服を着ていたら何かを隠していると疑う。これ、常識です。」
「はは、オレの常識にはなかったかな…。」
「はい、鈴いただきました。良かったですね、わたしが本気を出す前で。」
「…うそでしょ。」
「わたしは合格ですよね?」
「それ、首にクナイ当てて言うセリフじゃないよね。」
「信じなくても結構ですけど、わたし暗殺と拷問が十八番なんですよ。さっきの常識は、拷問友達に教えていただいたものです。カカシ先生、わたし、人を殺すことに何の抵抗もないんです。ねえ、わたしの言いたいこと、解るでしょう?」
「…ずいぶんと自分の力を過信してるみたいだね。」
「それだけの訓練をしてきましたから。まあ、カカシ先生には解らないでしょうね。」
「じゃあ、教えてよ。」
「生まれたてときから毒を食らい電流を浴びせられてあらゆる拷問を受けてきたと言っても信じないでしょう。それで。わたしは合格ですよね?」
「…ああ、合格だ。」


20130129

mae tsugi

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