▼臨也
「もう高校生ですね、臨也くん」
「しかも、あと1年だよね」
若々しい青少年たちがグラウンドできらきらと汗を流しているのを屋上で眺めながら私は言った。
そう、私たちは高校3年生。
思い返せばあっという間だった。長かったようで、実はとても短かった。私はそれを無駄に使ってしまったような気がして不安で仕方がない。若いときの3年間というものはとても貴重だと思うから、私はいつもこわいよ。ねえ、臨也くん。私、ちゃんと成長出来たのかな?恥ずかしくて聞けないけど、すっごく不安だよ。
これから私たちは終わることの方が多くなってくるでしょう。
私たちはその中で一体何が出来るのかな?
「確か、3年生はもうすぐ部活を引退する時期だよね」
ぽつりと呟いた臨也くんに、私はハッとしたように頷いた。
何故だか無性に泣きたい気分だった。
「隣のクラスの奴がさ、後輩のこと誇らしげに話してたよ。アイツらなら安心して引退出来る、って。自分は終わっちゃうって言うのに笑ってさ。なんでだろうね?」
ほらアイツ、と臨也くんは、グラウンドで走っている坊主頭の男子を指差した。
ああ、廊下ですれ違ったことくらいはあるかもしれない。
「もし俺が好きなことを終わらせなくちゃいけなくなったとしたら、絶対にさせないのに」
「はは、臨也くんらしいや」
「君だってそうだろう?」
「私?そうだなあ…」
今からだと卒業が一番近い終わりだから、その話をするね。
私は来神に入って臨也くんに出会って色んなことに巻き込まれたけど、臨也くんのこと大好きだし、卒業してもずっと仲良くしていたい。だから、この関係だけは意地でも終わらせてなんてあげない。
思うんだけど、引退も卒業も、終わりだけど終わりじゃないんだよ。新しい可能性に場所を譲ってあげるサイクル。そして、私たちが新しいステージへ進むためのステップ。
「ね?そう考えると、引退も卒業も、悪いものだと思えないでしょう?」
「っふ、ははは!君は人を励まそうとするといきなりポジティブになるよね」
「え?」
「さっきまで変なこと考えてただろ」
「………あ!」
そういえば悲観的になってたかもしれない。臨也くんは人の心を読むのが得意だからバレてたようだ。おそろしや…!
「大丈夫。人のためにこんなに真剣になれるんだ。君は確実に成長してるよ」
「そんなこと言うなんて臨也くんらしくないね…」
「俺だってびっくりしてるよ。新羅に聞かれたら爆笑ものだね。でも、嘘じゃないよ」
「……ありがとう。大好きだよ」
「…うん、俺も大好きだよ」
臨也くんみたいな優しい人が友達で私は幸せです。
20120430
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