※新PVネタバレ要素有り 砂のようにこぼれてしまえば、忘れることなど容易かった。それなのに、こぼれない涙に濡れて胸に詰まる嘆きをおまえに押しつけてしまうこと、それごと忘れないで欲しいなんてああおれは弱いな。おまえのおかげで強くなれたつもりだったのに、優しくあれたつもりだったのに。またおまえのせいにして弱くなるなんて、情けないな。 「泣いてください」 ただひとつの願いのように祈る、ぐんにゃり歪んだ笑顔、ぼたぼた床まで鳴らす柔らかな雫。握られたてのひらが、あたたかくて少しだけ眠い。 「泣きわめいてください。悔しい悲しいつらいって、言ってください、泣いてください。よわくっていいですだって、だってキャプテン」 だからこそもう泣けない。これは意地でわがままで、これ以上おまえの強さに凭れてしまえばきっと、俺はもうおまえの中ですらキャプテンでいられない―なんて違うな、ただの強がりだよ。 おまえの高らかで自由な翼に、俺という弱さを乗せてしまうことが悔しい。おまえの時折覗く弱さを背負ってやれないことが悲しい。おまえと、あの希望に美しくきらめくフィールドを走り続けられなかったことがつらい。それなのに、あの日掴まれた心臓がプライドが塞き止めた感情。こんなとき、ごめんもありがとうも軽々しくて嫌になる。 「天馬」 「…はい」 「好きだから」 「……はい」 「見栄を張らせて欲しい」 見通せない夢をみる。触れない未来をさぐる。いつか、いつになるか、わからないけれど、そこにいて欲しい。俺を掬った笑顔でまっすぐな瞳で。 「また、フィールドで」 そのときみんなが守った誇りを掲げた腕で、おまえを抱きしめ泣くよ。 (泣けない強さをあげてごめんなさい) (ありがとう、君がいたから弱さも愛せたよ) |