08.花を咲かせるためのポイントは

 光喜が寝ているのをいいことに、小津には光喜攻略ポイントを教えた。テーブルを挟んだ向かい側で、床に胡座をかいてこちらを見る顔は真剣そのもの。
 しかしそんなに難しいことではない。簡単に言うと飴と鞭の使い方。光喜は甘やかされるのが好きだから性質はかなり奔放。だけど手綱を取れば意外と素直に言うことを聞くようになる。根っこにある性格は至って真面目で曲がらないまっすぐさがあると思う。
 しかし束縛は嫌い。あんまり雁字搦めにすると逃げていく。さじ加減は大切だ。

「まあ、難しく考えずにやってみなよ。光喜は警戒心が強いタイプだけど、あれでいてわかりやすい性格だから、本当に嫌なことは顔に出るし。いまのところ小津さんに対して好印象だと思うよ」

「ありがとう。が、頑張るよ」

「ほらほら、もっと肩の力抜いて」

 やたらと力んでいる小津に苦笑いをしてしまう。いままでどんな彼氏だったんだろう。優しいし、包容力系だし、大人しい可愛い子かな? でも美人が好きだって言うから、女王さま系だったりして。

「戻りました」

 好奇心が疼いて小津に声をかけようとしたら、その前にリビングの扉が開いた。コンビニから帰ってきた冬悟は俺を見てやんわりと笑う。

「あ、冬悟さん、おかえり」

 小津の付き合っていた相手、冬悟なら知ってるかな? 付き合い長いから知る機会もありそうだよな。
 コンビニから帰ってきた冬悟をじっと見つめると、俺の視線に小さく首を傾げる。しかしもの言いたげな表情に気づいたのだろう。俺の座っているソファの傍にまで来て、のぞき込むように身を屈める。

「笠原さん、どうかしましたか?」

「うん、冬悟さんは小津さんのいままでの彼氏って会ったことある?」

「あ、はい。ありますよ。慎ましい感じの綺麗な人ばかりでしたね」

「へぇ、光喜とタイプ違うのか」

 あいつは全然慎ましくないし、綺麗な顔をしているけど美人と言うよりも顔立ちのはっきりしたイケメン。かなり男らしい顔立ちだ。どの辺が気に入ったんだろう。

「小津さん、光喜のどこが好き? やっぱり顔?」

「えっ! あ、ああ、いや、その、顔はいいよね。あんなに綺麗な子は滅多にいない。でも光喜くんの明るくて華やかなところ惹かれるかな。一緒にいるとすごく楽しい」

「光喜さんと一緒にいる修平はほんとに生き生きしてますよね」

 顔を真っ赤にしながら語る小津に冬悟は微笑ましそうな表情を浮かべる。その二人の顔を見る限り、小津がかなり本気で光喜に惚れているんだなってのがわかった。この気持ちに光喜が気づけばきっとほだされる。

「笠原さん、うどんと蕎麦どっちがいいですか?」

「んー、うどんにする」

「修平は蕎麦でいいですよね?」

「うん、ありがとう」

「そうだ、やっぱりさ、小津さん今日泊まって行きなよ」

「え?」

 バリバリとうどんの包装を剥がしながら顔を上げた俺に二人の視線が集まる。けれどその視線は気にせず、うどんつゆを容器に流し込んで薬味を載せた。

「いやさ、ちょっとでも光喜といる時間が長いほうがいいかなと思ってさ。まあ、ソファしかないけど。あ、なんなら光喜がいるベッドに潜り込む?」

 俺の提案になんの想像をしたのか、小津の顔がぼっと音がしそうな勢いで茹で上がった。

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