彼の視線の先でふわりふわりと風に舞うそれに、僕は目を疑った。白い小さなそれは間違いなく受験票だ。しかし彼はさして慌てる様子もなくそれを見つめていた。優しく吹かれていた紙が、急に強くなった風に煽られる。「……あっ」 思わず漏れた声。その声に気づいたのか。それとも風に吹かれたそれがひらりひらりとこちらへ向かって来た――ただそれを目で追っていただけなのか。 彼はゆっくりと振り返った。