「私ね、死因は老衰に絶対なるって思ってたの。なんでって言われても分からないけど絶対そうだって思ってたの」
突然かたりだした彼女に驚きつつも俺はポーカーフェイスなんて決めこんで適当に相槌をうつ。
プラコップに入った真っ黒なアイスコーヒーの水面が揺れる。
ゆらゆらゆら
真っ黒な水面に映った俺の顔が歪んで気味が悪い。
「…で何が言いたいんだい?」
「さぁ?わかんない」
「なんだそりゃ」
「伸二に殺してもらいたいのかも」
そう言って彼女は小説のページを捲る。
細かい文字が並んだなんたらの森という本。
構ってもらえない俺はただただ彼女を観察し続ける 。携帯は電池を切らしてしまっている。手持ち無沙汰というやつだった。
「何」
「なぁんにも」
「…拗ねてる?」
「べっつにー」
「嘘」
俺の視線に気づいたのか彼女は本を閉じた。本より俺を選んだという少しばかりの優越感。
こっちを見据える真っ黒な瞳
彼女の真っ黒な瞳にうつるのは真っ黒な俺 だ。

「さっきの話だけどさぁ」
「さっき?あぁ死因の?」
「そ。俺は殺してやっても良いって思ってるけど」
「…上から目線」
「俺のこと誰だとおもってんのぉ?」
「西園伸二様」
笑う彼女。笑う俺。
穏やかに午後は過ぎて行く。
本当に穏やかだ。
第三者から見た俺達はまともな(少しまともではないかもしれないが)仕事をするカップルにでも見えているのだろう。きっと。


「今でも死因は老衰って?」
「他殺…もありかもね」


胸元に隠した拳銃の冷たさを感じながら、笑う彼女を尻目に俺はコーヒーを飲み干した。


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