甘い寂寥感 孤独
ベランダから投げ捨てた鉢植えは乾いた音を響かせてコンクリートと追突した。
「伸二」
「どうした?」
「花枯れちゃった」
下ろす目線の先には砕け散った鉢植えと枯れた朝顔
太陽にじりじりと焼かれるコンクリート の独特な香り
ゆらゆらとうごめく蜃気楼に目眩がした
「なぁにしてんの」
「枯れちゃたから」
足元に置いたラジオから流れる名前も知らない音楽が蝉の鳴き声を打ち消す。
「通行人にさ」
「ん?」
「当たれば良かったのになぁ」
タバコの煙を口の端から零しながら、口角を上げて伸二は笑った。
心底心待ちにしていたように言われて少しだけぞくりとした。
通行人に当たって砕ける鉢植え
アスファルトに広がる赤
想像しただけで気持ち悪い。
「私がそうやって死んじゃったらどうする?」
「鉢植え頭におとされて?」
「血どろどろ流して」
熱せられたアスファルトに触れた血液は蒸発しそうだ、なんて頭の隅っこでぼんやり思う。
「それでも愛してやるよ」
ふーって毒がたくさん混ざった煙を吹きかけられた。
にやにやと笑う伸二
「次はひまわりでもそだてよーぜ」
「ひまわりおっきいからやぁだ」
「わがまま女」
「でも愛してるんでしょ」
聞き返すとゆっくり彼は笑った
「まぁな」
伸二が笑いながらそう言うから嬉しくなって私も笑う。
伸二が投げ捨てた煙草の吸い殻が地上のアスファルトに落ちて焦げた音が聞こえた、気がした。
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