「ねえ。私たち流れ星みたい」
制限速度ギリギリまでスピードを出す。いくつもの等間隔に並んだ街灯が通り過ぎて行く。
方向指示器を出し、追い越し車線に入る。やけに派手で周囲の車を煽るように走っていた隣の真っ赤な車を追い越した時、彼女はやっと笑顔を見せた。
「どこまで行こうか」
「どこまで行きたいんですか?」
彼女はけたたましくなり続ける携帯電話の電源を落とし足元の札束が詰まった鞄に無造作に突っ込んでから、悩んでいるのだろう。眉間に皺を寄せた。
「…行けるとこまで」
「どこにでも行けますよ」
「そうだね。どこへでも行ける」
全開にした窓から入る風が彼女の髪と短いスカートを揺らす。
日に焼けていない真っ白な太腿が眩しい。
「全一くんとならどこへでも行ける」
ちらりと前を確認して彼女に触れるだけのキスをした。
今ここでトラックにでもぶつかって死んだら面倒だけどそれも良いな、頭の片隅で小さく思った。