昔から興味があった
高校生が小学生になる探偵漫画には心惹かれたし、子供が大人になるアニメには興奮した。
自然の摂理に逆らったものが好きだった
年をとらない体、逆をたどる成長、不老不死
可笑しな子供だったと思う。ただその性癖は今も変わっていない

「あなたは何を代償にしたの」
白熱電球の蒼みかがった光が部屋を照らした
目の前にいる彼はデスクトップを見つめたまま笑う
「さぁ」
「真剣に聞いてるの」
「特に何もないですよ」
ライターの音がした。乾いた空気に煙草の煙が混ざる
真っ黒な爪と真っ白な細い指のコントラストにマルボロが死ぬほど似合っている
「うそつき」
「デメリットよりもメリットの方が上回っているので別に何もないですよ」
「そんなに得なの。不老不死」
「今のところは」
煙を吐いて彼は笑う

目の前にいるアルビノの男は不老不死だ
もちろん彼は特別なんかじゃなくこの組織には不老不死なんてゴロゴロしているのだ
現に彼の上司であり母であり女王さまである御恵てうはいつまでたっても美しい
「23」
「まぁその位ですね」
「化け物」
「よく言われますよ」
彼はそう言って煙草を持ったままソファーから立ちあがった
ぼとりと煙草から落ちた灰がモスグリーンのラグにまぁるい焦げ目をつけた
「変態ですね」
不意に伸びた真っ白な左手が私の首筋に触れた。
頸動脈 その下を流れる真っ赤な血液
こちらを凝視するかれの瞳は餌を狙う獣の様に鋭く、仄暗くひらっている。
「拍動、すごいですよ」
「そういう性癖なの」
「お互い様、じゃないですか」
最後の一口を吸い込んで彼はゆっくり吐きだした
ニコチンをはじめとした有害物質は私の顔に直にかかる
なれない煙が肺を犯す感覚に寒気がした
「・・・煙い」
「あぁ。窓あけますか」
まるで他人行儀にくるりと背を向けて窓へ歩き出す彼
お前のせいだろと、でかけた言葉は飲み込んだ。
下ろされたブラインドが少しだけあげられる 差し込む光
たくさんの灰色の高層ビルが見えた
窓を開けると部屋に飛び込む都会の雑音
パトカーのサイレンの音が鳴り響いている
「あぁでも」
彼が振り返る
「あなたとともに死ねないのは少し残念ですね」
けたたましくサイレンとともに飛び込んだ彼の言葉はしっかりと私に届く
「・・・大きなデメリットね」
私の言葉に彼はゆっくり笑った


大人になれない



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -