バスタブいっぱいの愛をくれ
目に見えるものが欲しいんだ
バスタブいっぱいにジントニックを作ってくれ
ジンに酔ってそのまま溺死だなんて最高にイかれてて良いじゃないか
愛をくれ
破り捨てられる使い捨ての愛なら尚良い
1日限りの使い捨てなんて大歓迎だ
愛をくれ
遊女のように小指を差し出す愛を
死臭のように付きまとう愛が良い

おれは、あいにしずみたいのだ


砂嵐が酷いアナログのテレビから途切れ途切れ聞こえるグリーンスノーブス
色褪せてクリーム色に変わったシーツの波の中で彼女はアナウンサーのまねごとのようにひどくゆっくり言った
「世界が終われば良いのに」
「終わらせてやろうか」
冗談には苦々しい言葉 だと吐き捨てた後に後悔した
彼女の黒い大きな瞳が俺を真っ直ぐ見据える
ぱちり
真っ黒な瞳に映るのは真っ黒な俺
「ダンが羨ましい」
「あぁそうだろ」
「世界を終わらせられるダンが羨ましい」
もそもそとシーツの中で動く白い手足のなかでは真っ赤なペディキュアがやけに目立つ
彼女の細い腕に抱かれたデザートイーグルが朝日を反射して鈍く輝く
ベッドにまで銃を持ち込みなんて、なんて物騒な女なんだと覚醒していない頭の片隅でぼんやり思った。
「明日なんていらないの」
「明日はダンじゃないかもしれないから」
「それなら明日なんていらない」

「ダンの居ない世界はいらない」

細い彼女の腕が首に絡みつく
薄いシャツ一枚越しに伝わる体温
ソファーから動けなくなる俺
「重いな」
「…重い女は嫌い?」
真っ黒な瞳に映る真っ黒な俺
笑う彼女
サーモンピンクの唇がゆっくりと美しい弧を描いた。
「いや、」
「もしも私がHSだったら?どうする?」
「撃ち殺してやるよ」
「今ならゼロ距離だから死んじゃうね」
「ぁあ、心中ってか?」
「重い女だからね。心中くらいするよ」
「自慢にならねぇな」
「それだけ愛してるんだよ」
嬉しい?
そう言って笑う女に苛立ちを覚えたのでかき消すようにその唇に噛みついた
『ダンの居ない世界はいらない』
そんな重い台詞が頭に響く
重い愛をくれ
クロコダイルのように骨を溶かす愛をくれ
明日さえ見えない重い愛をくれ



「なぁ愛してくれ」

あぁ、吐き捨てた言葉と本音が床に落ちた



溺れる


ダン…合衆国が飼う殺し屋が持つ多層人格の内の1人。
HS…ヘブン・スマイル 合衆国に蔓延するテロリスト 人型爆弾。笑いながら近づき抱きしめて爆発する。


大好きなゲームKiller7の大好きなダンでした。


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