「あなたが殺したんでしょ」
なぁんて。
知ったように話す目の前の女がやけにむかついたから思いっきり殴った。
うずくまる女
拳についた血が気持ち悪くてクリーム色に変色した安いホテルのシーツになすりつける。
鼻から血を流す目の前の女。
今日の女は泣き叫んだりしなかったからまだ気分がよい方だ。
「…狂ってる」
煙草の煙を吐き出しながら女の戯れ言に耳を傾けてみる。
俺を睨むまっすぐな目。
直視していて気持ちがよいものではなかったから目を逸らした。
「好きな女を殺すなんて狂ってる」
二本目に火をつける頃には女はかなり饒舌になっていてあることないことを吐き出した。
あまりに異様な光景だったから何事かと思っていたら床に注射器と白い粉が転がっていた。
ぁーそういうこと、とそれらを視界の端に入れてなんとなく理解した。


「本当に狂ってる!!」
「ご機嫌なとこ悪いんだけどあんた何話したら駄目だとかそーいうの理解できてないんじゃない?」
床に脱ぎ捨てたスラックスのポケットから拳銃を取り出して饒舌な女の口に突っ込む。

なんかそーいうプレイみたいだなんて思う。
急に焦りだした女がやけにむかついてもう一度殴る。
骨と骨がぶつかる音。
少しすっきりする。
「寝てろよ」
女の唾液がついた銃身をシーツで拭ってジャケットを羽織る。
何か言いたげな目線で女が見てきたが無視した。
「ぁあと俺は狂ってなんかねーよ」
へらへらっと笑って短くなった煙草を絨毯へ投げ捨てる。
じゅっと音がして微かな焦げた臭いがした。


別に俺は狂ってなんかいない。
ただ好きだった女を好きすぎて殺してしまっただけだ。
別に俺は狂ってなんかいない。
狂っていないんだ。

あの世で罰を受けるほど



人を愛したってだけの話だ。
なぁそうだろう


僕の知らない世界で 様 提出
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