「俺が死んだらさ」

そう言ってみたら真っ直ぐな瞳でこっちを見つめてきた。
くすんだ蛍光灯の白が彼女の艶やかな髪に当たって茶色く輝く。
「死んだら?」
「どっちに行くんだろうなぁって」
言い切る。
すると彼女はぱっちりとまばたきをして小首を傾げた。
「地獄?」
「なんでだよ」
「だって伸二君悪い人だもん」
にっこり。
彼女はそう言って笑った。
あまりにはっきりとしたその言葉に俺は一瞬言葉が浮かばなくて煙草に手を伸ばした
「…神様は伸二君のこと許さないよ」
少しだけ悲しげに伏せられる彼女の瞳。
古ぼけた真っ赤なラジオから流れるガレージ・ロックが空気を揺らす
「そん時はお前も道連れな」
「えー嫌だよ」
「はい強制ー」
「独裁政治反対ー」
けらけらと笑う彼女の声が響きわたる。
揺れる細い肩。
触れたら折れてしまいそうだ。
「でもね」
「でも?」
「伸二君が寂しいっていうなら地獄まで落ちてあげるよ」
にっこり。
その柔らかな笑顔をみて地獄に落ちてみるのも別に良いかもしれないなんて煙草の煙を吐き出しながら思った。


死後の話


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -