ねぇ知ってる?
天使になれるって話は前したじゃない。それには続きがあるの。
天使になるのは少し痛いし怖いわ。
だから天使になる子には女神様が来てくれて手を握ってくれるの。
天使になるまで。天使になるまでずっと。






女神様 って呼ばれるのは悪くないけど死に際を見せられるのは気持ちよくない。

ねぇ女神様。私天使になれる?

縋るように聞かれた声にはいつも笑って頷くようにしていた。
するとどの女の子も嬉しそうに笑う。
手首からのびる赤い管。シンクにたまったアルカリ性溶液。
死ぬ間際の女の子達。
どれも正直見ていて気持ち良くなんかない。
(アルカリ性溶液のヤツなんて断末魔が最悪だった)
天使になる子を迎えに来る女神様。
イメージの一人歩き。夢物語。
本当は違うんだよ。何度か口の中で呟いたが声に出すのは躊躇っていた。絶望する少女達はもっと見たくない。



「女神様と、呼ばれているそうですね」
乱れたシーツの中で甘いピロートークの代わりに彼はそう吐き出した。
引っ掛けとか騙しではなく純粋な世間話というような様子。なんとなくだが横に寝そべる、髪が少し乱れた彼はいつもよりもこどもっぽかった。
「まあ、ね」
「女神ですよ。嬉しくないんですか?」
「だって違うもん」
私は女神でもなんでもないし、学窓に提出する為のデータを取る為に女の子達に寄り添っているだけなのだ。私は女神みたいに美しくも優しくもないただの使いっ走りだ。
「その方が私には都合が良いですけどね」
そう言ってこちらを向いた彼と視線ががち合う。真っ赤な瞳は珍しく、柔らかく細められている。
「絵画などに描かれる女神には翼があります」
「う…うん。神様だからね」
「翼があれば飛ぶことができます」



「あなたには飛んで行かれたくない」
うつ伏せになっていたからむき出しであった私の肩甲骨に小さくキスされた。薄い唇は肩甲骨を通り過ぎ背骨をなぞる。奇妙な感覚とこそばゆさに少しだけ震えた。
「逃がしませんから」
背骨の真ん中あたりに落とされた二つ目のキス。
穏やかな声の割りに物騒な言葉とこのまま背骨を食い千切られるのかもしれないという恐怖に私は心の奥底でひとりぶるりと震えた。

















「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -