シド・ヴィシャス(Sid Vicious)
1957年5月10日 - 1979年2月2日/イギリス、ロンドン出身のパンクロッカーで、極度の麻薬中毒者。
ラ・モーンズの熱狂的なファンとして有名だった彼をプロとしてスカウト、セックス・ピストルズの2代目ベーシストとなる。
パンクスを地で行く生き方から、彼を「パンクの精神」と呼び、崇拝する人間はイギリス国内外問わず数多い。
1979年2月2日の夜、薬物の過剰摂取により死亡。享年22歳。



「私はシド・ヴィシャスになりたい」
「…それはなりたくてもなれるものでないんじゃないのかい」
俺の横に座る彼女は細い指で切りすぎた前髪を引っ張る。そんなので早く伸びるわけないとぼんやりと思った。あと、その細い指ではベースの弦は弾けないだろうなと。
「何て言うか分からないけど、理想なの」
「生き方がかい?」
「…愛され方?みたいな」
「なんだそりゃ」



ドラックによる昏睡状態から目覚めて飛び込んできたのが愛した女の死体で、死んだ後には愛した女の隣に眠ることを許されなかった男
愛され方なんてろくでもないだろう。そんな男よりも両親に大切に大切に今まで育てられた彼女の方が存分に愛されているはずだ。
「彼の母親は彼の願いを叶えるために墓を掘り起こして彼の遺灰を恋人の墓に蒔いた」
少なくとも母親は彼の事を深く理解していたし愛していたはずだよ。
と、美しい言葉の羅列を語っているはずなのに彼女は無表情のまま前髪を伸ばし続けている。ソファーの上で膝を抱える彼女は酷く小さい。
「俺は隣に埋めてくれとまで懇願されるナンシーの方が愛されてたと思うけど」
ねぇどーよ。覗きこむようにして彼女に視線を合わせると彼女は驚いたような顔をしたあと、満面の笑みを浮かべた。
「なら私はナンシーになりたいな」






『俺達は死の取り決めがあったから、一緒に死ぬ約束をしてたんだ。 こっちも約束を守らなきゃいけない。
今からいけば、まだ彼女に追いつけるかも知れない。
お願いだ。死んだらあいつの隣に埋めてくれ。
レザー・ジャケットとレザー・ジーンズとバイク・ブーツを死装束にして、さいなら。』
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