君の恋、どうか叶わないで/宇都宮虎丸

「虎丸くん。卒業、そして雷門中入学おめでとう!」

「ありがとう。先に、雷門中で待ってるね!」

「…うん」


…虎丸くん、君とあたしは、ずっと一緒に居たよね?

乃々美お姉ちゃんも一緒に、いっぱい遊んだよね?

でも君は、君だけが、遠くに行ってしまったみたい。





「俺、雷門中に入りたいんだ!」





そう言った虎丸くんの表情(かお)は、憧れの豪炎寺さんに対するものだけではないような気がして。

赤くなった頬をして君が見つめる先は、あたしじゃないって気付いてた。





「優!」

「優は本当に泣き虫だなぁ。ほら、大丈夫?」






あたしに対してはいつも笑顔でいた虎丸くん。

でも、“あの人”には――


「あ、虎丸くん。」

「う、あ、あの…っ」

照れた顔。少しだけ拗ねた顔。いろんな顔を見せてた。


あたしはやっぱり、“妹”なんだ、ずっと。

それなら精一杯大切な“お兄ちゃん”の虎丸くんの恋を応援しよう。

――なんて、

思ってた筈なのに、な。


「あたし、弱いな…」


あたしはまだ小学生で、恋をするなんて思ってもみなくて。

でも、まだ小学生なのに、恋をしてしまった。

――幼馴染に。


あたしはどうして君に恋をしてしまったんだろう?


いつの間に――

好きになってしまったんだろう?


でも、一つわかるのは、あたしはまだ幼くて、君の恋を応援できるほど強くないってこと。


「君の恋が叶わなければいいのに」


そうつぶやいてしまったのは


幼いあたしには、まだ君が必要だから。

ごめん、虎丸くん――



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