「キライ」を訳すると/成神健也


生意気な後輩で知られる俺。

先輩だろうが何だろうが口答えする。


自分の顔はまぁ、ソコソコいい方だから多少の女子には興味をもたれている。

だけど、俺はそんなのに興味ない。


だって俺にはもう好きな人がいるから。


「なにしてんすか、先輩。」

「ん?成神くん?」


部室をあけると、そこには女の先輩がいた。


「また雑用押しつけられてるんですか?」

「押しつけられた…より任されたかな?」

「それが押しつけられてるんっすよ。」


このホッチキスでプリントをとめてる先輩は名前先輩。


名前先輩はサッカー部のマネージャーであり俺の片思いしてる人。


お人好しからか、よく雑用をまかされる。

この人はバカか。

とか思いながらもなんでも笑顔で快く受け答えてくれる先輩に少なからず好意を寄せてる男もいる。


確か佐久間先輩も名前先輩がいいとかなんとか言ってたな…。


そう考えたら、なんだか自分の中の感情がぐるぐると黒い渦をまいてきてるようだった。


「名前先輩、ほんっとバカですよね。」

「ん?あたしはバカだよ?勉強もなにも出来ないし。」

「そういうバカじゃないっす。意味わかってます?」

「ん?わからないな。」



「あはは。」と軽く笑って俺の発言を流す。

そんな笑顔を他の奴にまで見せてるなんてまたイライラしてくる。


「この鈍感……。」

「なにがかな?」

「別に……。」


名前先輩が好きなら、告白すればいい。

とか内心思ってる。


別に俺の顔ならもしかしたら…と可能性はある。

だけど俺は告白なんてしない。


なんだか、自分のプライドが許さないのだ。


生意気とレッテルをはられ、そんな俺が恥ずかしがりながら告白って…

なんだか少し嫌だった。

俺の性格は捻くれてるのか、とか思ってしまう。


「あ、」

「俺も手伝うんで早くやってくださいっす。」


俺はまだ名前先輩の横に積み重なっているプリントを取り上げた。


「ありがとう成神くん。」

「いいから、早くやってください。」

「ふふっ、そうだね。」




名前先輩がそう言うと、パチンパチンとホッチキスの音が二人の間に流れ始めた。


でも、名前先輩といるとなんだか安心する。

名前先輩の笑顔を見るとなんか嬉しくなる。


こんな単純な事で気持ちが変化する俺もバカなのだろうか。


するとその時、部室のドアが開いた。


「名前ー。」

「どうしたの辺見?」

「ちょっとケガした。手当てしてくれねぇか?」

「あ、待ってて今救急箱だすから。」


名前先輩は席から立って救急箱をだしにいった。


「成神、お前も名前と一緒なのかよ。」

「辺見先輩には関係ないじゃないすか。」

「おー怖っ。」


そう言ってニヤニヤと笑う辺見先輩を俺はキッと睨んでやった。

あとでキラースライドでもかましてやる。


「ほら辺見、座って。」

「お、わりぃわりぃ。」

「全く…気を付けてよね。」

「へいへい、わかってますよー。」

「はい、手当てしゅうりょー。」


そういって手当ては終わってるはずなのに、後ろから名前先輩と辺見先輩の楽しそうな笑い声が聞こえる。


あぁ。そうやって笑顔を振りまくから皆名前先輩に惹かれていくんだ。


そう思うと俺はホッチキスで指を挟んで名前先輩に手当てしてもらって二人の間に割り込もうとか考えた。

だけど心配されるのもなんだからやめた。


「ありがとな名前。」

「ううん、練習頑張って!」

「おう!成神も終わったら早く来いよな。」

「わかってますよ辺見先輩。」


そう辺見先輩がいうと、またさっきの二人空間が戻ってきた。


「名前先輩。」

「ん?なに?」

「俺…名前先輩…嫌いっす。」


皆に笑顔をみせている名前先輩が。


「そっかぁ…。」

「…………。」

「でもあたしは成神くんが好きだよ?」

「……。そうっすか。」


正直そんなこと言われてかなり嬉しい。


だけどやっぱり、笑顔を振りまく名前先輩は嫌いだ。


「ならどうにかして俺に名前先輩をを好きって言わせてみてくださいよ。」

「ふふっ、できるかなあたしに?」

「できますよ。」

「どうやって?」



そう聞かれると、ぼそりと俺はつぶやいた。




「名前先輩が俺だけに笑ってくれれば。」




そういうと、名前先輩は俺にニコリと笑ってくれた。




0110326 提出














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