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15 単刀直入に聞くが


ハイオ・エレクロイカは興味深そうに本部を見回しながら歩く。


「初めて参りましたが立派な建物ですね。」

「老朽化が進んできましてね。建て替える予算もないので、出来るだけ長く持ちこたえて欲しいものです。」


エルヴィンとそんな話をしているうちに辿り着いたのは、ユフィの工房。

エルヴィンとハイオ、そしてリヴァイは扉の前に立つ。


「ここがユフィ技術師の工房にしている部屋になります。」


そう言ってエルヴィンは扉をノックすると、中から「はぁい」と間延びした声が聞こえた。


「師匠!」

「ユフィ。元気だったかい?」


工房に入って一番最初に声をあげたのは、部屋の真ん中で立体機動装置をいじっていたユフィだった。

それに対して穏やかな眼差しで両手を広げるハイオに、ユフィは駆け寄って抱きついた。

リヴァイはその二人から思わず目をそらす。


「師匠!リヴァイの立体機動見たことある?すごかったんだよ!」


すぐにハグを解いてユフィはキラキラした眼差しでハイオを見上げた。


「なっ……ユフィ!呼び捨てなんて失礼なことをするんじゃないよ。すみません、リヴァイ兵士長。」

「いや、構わない。慣れた。」


焦ったように謝ってくるハイオに、視線を合わせず答える。

それからユフィは今まで直した立体機動装置の数や装置以外の機械も直したこと、この機材は別の型の方が使いやすい、あれが足りないがこれはいらない、などこの工房の状況を事細かに、ハイオに中を案内しながら説明し出したので、エルヴィンとリヴァイはやることもなくその様子を眺めていた。

そんなユフィをハイオはとても優しい目で見るので、リヴァイはやはり胸の奥にくすぶるものを感じずにはいられなかった。

ユフィがひとしきり話終えるとエルヴィンが、


「彼女の仕事は本当に早いですね。修理が必要な装置は残り10機ほどです。これは我々が予想していた以上のスピードだ。」


と声をかけた。
ユフィの頭を撫でながらハイオは誇らしげに微笑む。


「ユフィは技術部一押しのルーキーです。これからもっと伸びると思いますよ。」




*****




「あぁ、私としたことが資料を忘れてきてしまった。少しお待ちいただけますか。」

「ええ、構いませんよ。」


30分後にユフィとハイオ、そして調査兵団の幹部による会議が始まる。

エルヴィンは資料を取りに出ていき、会議室にはハイオとリヴァイだけになった。

密かに、リヴァイはこの時を待っていたのだ。


「ハイオ副部長。単刀直入に聞くが、ユフィは地下からどうやって技術部に入った?」


驚いたように目を見開くハイオ。


「……話したんですね?ユフィが。」

「ああ。知っているのは俺だけだ。」

「そうですか……。ではユフィが認めたあなたには私もお話ししましょう。」


ハイオはふうと息を吐いて、テーブルの上で手のひらを組んだ。


「ユフィの噂を聞いたのは3年前でした。技術者不足だった当時、私は腕のいい技師を探していたんです。なりふり構っていられなかったので、地下にも人をもぐらせました。立体機動装置を作っていると報告を受けた当時ユフィは14歳でしたが将来必ず大物になると私は踏んで、彼女を技術部に引き入れたのです。」

「だが居住権もない地下の人間がすんなり入れる訳じゃねぇだろう。」


ほぼユフィから聞いた内容だが、まだ分からないのはそこだった。
身元不明な人間が簡単に組織に属せるはずがない。


「ええ。ですからしっかりとした戸籍を作るために彼女を私の養子にしたのです。」

「養子?」

「彼女の暮らしていた環境を考えればそれが一番ではと思いました。可哀想に……毎日同居している女からの暴力に怯えていたようでした。口止め料を見せたなら、女はすんなりと彼女を差し出してくれました。あの子の才能と将来を潰したくはなかった。幸いにも私には妻も子もいない身でしたので。」


そう言ってハイオは丸い銀縁眼鏡の奥にある目を細めて微笑む。


「お恥ずかしいのですが、今ではすっかり親バカになりましてユフィが可愛くて仕方ないんですよ。彼女も私を父親……そして師匠として認め慕ってくれました。可愛い娘には旅をさせろと言いうように、色々と勉強になると思ってこちらに向かわせましたがやはり心配で。今日は元気そうで安心しましさたよ。」

「そうか……。」


リヴァイは理解した。

理解してしまった。


ハイオとユフィの関係が親子だったということに、心の中で安堵してしまった理由が。


ユフィが自分以外の男に好意の目を向けることに苛立った理由が。


(俺は……、)


ふいに扉が開き、入ってきたのはつなぎのユフィだった。

リヴァイは彼女を見て、ゆっくりと瞬きをした。


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