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9 考えたんだ
結局、彼女が処女にも関わらず荒々しく抱いてしまったあと、リヴァイは最低限しか乱れていない服を整えながら、ユフィにシャワーを浴びてくるように言った。


「リヴァイは……?」

「俺は自分の部屋で入る。行ってこい。」


本当は行為中に窮屈な全身のベルトを外してシャツやズボンをくつろげたかったが、脱ぐと自分の肉体に興味を示していたユフィがそっちに気をとられるかもしれないと思ったのでやめておいたのだ。

気だるさの残るフワフワとした足取りで彼女はシャワーを浴びに行き、カラスの行水かと思うほどの早さでタオルで頭をふきながら色違いのTシャツ一枚で出てきた。

ソファーに陣取り背もたれに腕を預けるリヴァイのやはりすぐ隣に座り、甘くて清潔な香りを漂わせながら彼を上目使いで見上げる。

行為の直後に邪険にすることもはばかられたので、いつものように襟首をひっつかむこともせずにそのままにさせた。
それに今は彼女がすぐそばにいることがそんなに嫌な気はしなかったのだ。


「ねぇ、また今度もしてくれる?」

「っ!」


まさかユフィの方からまたセックスをしてほしいとせがまれるとは思ってもみなかったので、リヴァイは一瞬面食らってしまったがどうにかすぐに平静を取り戻す。


「……あぁ、またしてやる。ただしこのことは誰にも言うなよ。一人でも誰かにしゃべったら二度としないからな。」

「わかった。」


ユフィとの交わりは機会があるのならまた手合わせ願いたいと思うほど、悪くないものだった。
彼女もまた気持ちよく感じてくれたらしい。

嬉しそうにうなずいて、彼女は熱心に髪を拭き出す。
たぶんしずくが垂れてこれから取りかかる装置が濡れないようにしたいのだろう。
なんとなく彼女の行動の意図が分かるようになってきた。


「……今は泣いたりしてないか。」

「ん?泣いてないよ。」

「そうか。」


彼女の声色はあっけらかんとしている。

それからユフィは少し黙って、口を開いた。


「……リヴァイに言われたこと、考えたんだ。」

「ほぅ。」

「あたしは機械をいじるのが好き。あと立体機動装置を直すのも楽しい。」

「あぁ。」

「師匠もあたしが早く一人前になるのを望んでる。」

「……。」

「だからあたしはここにいる。気がした。」


言いながら、赤茶の髪を真剣にタオルでこするユフィ。

正直、リヴァイは驚いた。
あのとき……ホームシックに陥ったユフィに放った言葉など、受け流されていると思っていたのだから。

彼女なりに考えていたのだ。
自分が調査兵団にいる理由を。
彼女の生き方を。

まだまだつたない言葉だったが、今はそれで十分だった。


「そうか。」


ぽん、と横にあるしっとりした頭を撫でてリヴァイは立ち上がり、扉に向かった。


「俺は部屋に戻る。パンがそこにあるから食え。だが飯は時間通りに食いに来い。」

「はぁい。」

「あとアレだ。人前でむやみにつなぎを脱いだり部屋着で外をウロウロするなよ。俺以外の男に無理矢理今夜みたいなことをされてもいいなら話は別だが。」

「……リヴァイ以外は、やだ。」


ドアノブをつかみかけて、振り返る。
彼女は真面目な表情をしているように見えた。

(その意図はなんだ?)

脳裏に浮かんだ疑問をなぜか今は口にしたくなくて無理矢理消し、そのまま工房を出た。

自室でシャワーを浴びながらリヴァイは物思いにふける。
まさかクソガキとあなどっていたユフィを自分が抱いてしまうとは。


極端で自由な彼女との奇妙な関係は、ある意味始まったばかりだ。




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