sit in the sun | ナノ

15-1


そんな顔を見たかったんじゃないんだ。










「あれ、映は?」

今日は合同合宿初日。
すっごい楽しみで、今日は遅刻しなかったんだ!
俺って凄いC〜偉いC〜!

「寝坊で遅刻だ。」

映に電話してた跡部は、そう言った。
寝坊で遅刻って・・・映馬鹿だな〜。

「悪いな手塚、出発遅らせて。」
「いや、こちらも1人遅れてるからな。」

なんか青学も1年生の子が1人遅れてるみたい。
映早く来ないかなぁ・・・。




それから数十分。




「あ、映だ。」

岳人の言った方を向くと、そこには映がいた。

「やっと来やがったな。」

だけど、映は青学のとこから一向にこっちに来ない。
ものすごく楽しそうに会話してる。
何で?何でそんなに青学の方にいるの?
しかも菊丸にいたっては抱きついたりしてるし。
映も、それに笑って返してる・・・。

「跡部、俺先にバスに乗ってる。」
「あぁ、席は後ろの方ならどこでも良い。」

跡部も苛立ってるのか、青学の方を睨んでいた。
なんか、もやもやする・・・。
自分でも良く分からないけど、さっきまであんなにわくわくしてた気持ちが一気に消えてしまった。
でもきっと映と話せば、また楽しくなるよね。
1人バスに乗りながら、俺はそんなことを考えていた。






「おはようジロー!」
「おはよう〜。」

しばらくして映がバスにやってきた。
ほら、映が笑って言ってくれるだけでもうこんなに嬉しくなった。

「ジローは遅刻しなかったんだね。偉い偉い!」
「映、何様やねん。」
「あはは、ごめんごめん。」
「遅刻したの映だけだぜ?」
「げ、マジか。」
「激ダサだな。」
「うううううるさい宍戸!」
「まあ向こうも遅刻してきたやついたしな。」

笑い声がバスに響く。
映がいるだけで、みんなが明るくなる。

「そう言えば映、お前菊丸と知り合いだったのか?」

岳人が隣でお菓子を開けながら聞いた。
菊丸って、青学の菊丸?
何で青学の菊丸が出てくるの?

「前に一回ストリートテニス場で会ったんだ。」
「ストリートテニスて、映テニス出来るん?」
「出来ますよー。昔テニススクール通ってたし。そんときは不二君と試合したんだ。」
「不二と試合!?」
「そ。」




何、それ。




「なんや、映テニス出来るんや。ほな今度俺と試合しよう。」
「あー侑士抜け駆けずるいぞ!」
「まあまあ、今回合宿で自由時間あるんだし、その時みんなでやろうよ。」
「簡単に言うけど平塚、俺たちずっとテニス漬けにする気か?」
「え、良いじゃん。」
「俺も映先輩とテニスしてみたいです!」
「鳳君のあのサーブは嫌だなぁ。ってうそだって鳳君!試合しようね!」
「はいっ!」
「あ、でも先に英二と試合しなきゃ。」




・・・さっきから、何だこれ?




「菊丸と?」
「うん、この間約束したからさ。」
「へー。じゃあ、俺その次な!」
「岳人、抜け駆けはあかんで?」

あはは、と笑い声が響いた。
なんでそんなに笑えるの?
何が楽しいの?
俺、映がテニス出来るって知らなかった。
もう1ヶ月も一緒にいるのに、全然知らなかった。
それを何で青学のやつらが知ってるの?
おかしいじゃん、そんなの。




あ、またもやもやする。




笑い声が、耳につく。






「うるさい!!」






気がついたら、俺は声を荒げていた。自分でもびっくりした。

「ご、ごめんジロー。」

映が、凄く驚いた顔をして俺を見ていた。
気まずくなった俺は、窓の方を向いた。
あんなこと言うつもりなかったのに・・・。
その後も俺は、胸の中が何かざわめく感じがずっと取れなかった。






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