1010 | ナノ



出逢わなければよかったね、と彼は笑った。ひとつ歳を取った、この日をともに迎えたのは何回目だろう。俺は相変わらず気の利いたプレゼントができないし彼はそんなのいいとも言うし、それが虚しくないと言えば嘘になる。俺は彼には嘘など吐きたくないゆえに思うところを話せば、出逢わなければよかったね、などと笑う。そんなこと言うなよ。うんごめん、でも、出逢えたでしょう? ……ずるい。うん、ずるいよ、俺は世界からお前を奪った奴だからね。髪を梳く手はやはり優しい。ふと手がぴたり止まり、土方若白髪だ、そう笑って、俺はようやく不器用に笑えた。





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茶会にて書かせていただきました
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