銀土(←高) | ナノ







夜更けのベンチに彼はいた。棄てられたぼろ雑巾がごとくぼろぼろで、仰向けられた身体は街頭に白く色を浮き立たせていて、だから首筋の赤い痕も見て取れた。やおら俺は幻滅する。捜しに捜した挙げ句にこれか。シャツをおざなりに着ている彼はかろうじて意識があるようで、時折目蓋を震わせている。近づいて見下ろす。臭い。精液と血液のにおいに顔をゆがめて、なにしてんだばかやろう、笑い混じりに言ってやる。目蓋が震えて僅か視線を上げ、力尽きるごとく閉じられた。こんなとこで寝るんじゃねえ、襟を引っ張り上げて赤い痕だらけ嫌なにおいまみれの身体を起こそうとして、――止した。肌蹴た胸に目が行った所為だ。ああ、俺がちょっと目を離した隙に、なんて自己嫌悪は寸分も抱かずに、いろいろなものを綯い交ぜにした感情を白い赤い男に向ける。おい起きろ、都合悪けりゃ狸寝入りかよふざけろ、おねむの時間にゃまだ早えぞ。より肌蹴させたシャツ、胸が外気に触れて身体がひくり震えた。なあ、お前はいつからこんな子になっちゃったわけ、お前は誰の子だったっけ、忘れちゃった? かなしいなあ。笑って唐突に、赤く腫れた乳首に噛みついた。びくんと跳ねた身体、吐かれた悲鳴は痛みのそれではあれど明らかに、明らかに、ここに打ち棄てられる前に身体にされたあれこれを引き摺った色も孕んでいたから俺は再度、誰の子だか言ってみな、それとも言えないようにされちゃった? ならそれは俺の落ち度だなあ、――しかたねえからヒントやるよ、ベンチに乗り上げ彼の股間を踏みつける。今度こそ純然たる苦痛の悲鳴でだから俺は安堵に笑む。そして夜空へ、声に出さず叫ぶのだ。俺のこいつをこんなにしやがって、宣戦布告はとうにしただろうが、覚えていやがれ。

愛しい彼の胸、血にまみれたピアス。装飾、紫の蝶々ひとひら。





茶会ろぐ お題・『ベンチ』で【乳首ピアス】【噛み付き】
はじめてピアスかいた

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