銀高沖土 | ナノ







肴代わりの菓子と缶ビールとペットボトルの炭酸飲料と煙草を数えるのも嫌になる程買い込んで、観るかどうかは解らないがDVDを適当に何枚か借りて、俺達四人は試験明けの週末を満喫せしと決めた。碌に物もありはしない高杉宅に家主と俺と沖田と土方。はっきり言って高杉と沖田は邪魔でしかなかったが今夜は我慢してやろう。乾杯して肴の類を開けて各々飲み始めると早々に沖田がえぐいAVを回し始め、土方は嫌な顔をして画面から顔を背けて忘れようとばかりにビールを豪快に呷る。スクリームクイーンかと呆れる女の喘ぎ声に笑う俺を余所にふと高杉が、こないだ読んだ本に載ってたなマドンナがフェラした話、と突拍子もないことを言い出した。はあ何それ? 何だっけな、何かゲームやっててマドンナが負けたんだよ、んで罰ゲームが、コーラの瓶でフェラ、だったんだと。マドンナ相手によくそんな注文しやすね誰だか知らねーけど。で、実行したの? 見事にやり遂げたらしいぜ、その場にいた面子は感動したらしい。言葉を切って高杉は煙草を銜えた。フェラで感動ってどんなんよ、言って俺は口の中のトッポをビールで嚥下する。あんま飲むとまた後悔しやすよ土方さん、沖田がぺきり、と音を立ててペットボトルの蓋を開けて土方に差し出す。土方も受け取ろうと手を伸ばしたが、すこん、とその手が床に落ちた。その儘頭もことりと下に傾いた。どうした土方? 高杉が訊くも返答はない。あ、やばいかもこれ。呟いた沖田の視線は土方の横あたりの床に向けられている。高杉と揃って覗き込むと成程やはり、やばいかもこれ。純粋培養土方君にAVは早かったのかそれとも沖田君の趣味が悪かったか(多分両方だ)、兎に角画面から逃避したかったと思われる土方は飲むピッチとキャパを忘れて仕舞ったらしい、床には累々と空の缶ビール。これはやはり完全に酔っ払って正体をなくしておられる。――この状況下で土方と二人きりだったらあれやこれややれるのに、と思わなかったわけではない。そもそも俺には前科があるわけで――などと考えていると土方はゆらりと身体を傾いだ。ちょっとあんた倒れねーで下せえよ、支えようとした沖田をしかし土方は無視して、意外と芯の残っている動作で起き上がる。先程沖田が渡そうとしたペットボトルを掴み、そこでちら、と、俺達を見た。ああ目が酔っている。目の周りから頬まで赤く腫らした土方はペットボトルの中身を呷って、またもちらりとこちらを見てから、――飲み口を縁に沿ってゆるりと舐めてみせた。誰かが唾を呑んだ音が聞こえた、俺かもしれないしともすれば全員。飲み口の中に入れた舌先はひくり二、三度動いて、だから土方が何をしようとしているかを存分に把握した。おいおいマジかよ俺のマドンナ。声にも出せず唖然とするこちらを余所に土方は笑ってさえみせて、飲み口の周りをちらりちらりと擽るように舐める。舌は唾液の糸を引いて、唇を緩慢と舐めた。これはどうしたものか、困惑やら下半身の事情やらで言葉が出ない。ただテレビから聞こえる女の声が喧しかった。土方は胡坐を掻いていた片膝を立てて、ペットボトルを下から上へ舐め上げる。その儘飲み口を咥内に含んだ。……ねえ沖田君あのチョイスわざと? AVですか? や、あれ、カルピスソーダ。……びっくりするほど偶然です。何してくれてんだテメェ。こそこそ話す間にも飲み口に吸いつくようにして傾けたペットボトルから白色の炭酸飲料が土方の唇に流れてゆく。喉仏が嚥下の旨を告げて尚更困惑した。俺だってあんなことされたことないのにあのペットボトルめ、いやここはマドンナの件を話した高杉に感謝すべきか――なんて思った矢先、普段もあんな素直ならなァ、などと高杉が不穏なことを口走った。咄嗟に高杉を見る、と、沖田もまた高杉を見ていて、そして高杉はといえば俺と沖田の視線に面食らっていて、だから――これはまさか、と嫌な結論に辿り着いた。ちょ、お前らマジ? ……こっちの科白だ馬鹿野郎。俺の科白でもありやすが。睨み合ったのはしかし数秒、この事の発端は今酔っ払ってとんでもないことをやらかしている土方であると思い至り、三者揃って視線を土方に戻す、と、待っていたかのように土方は両脚を畳んだ儘床にうつ伏せた。ペットボトルを持った両手の肘を床に突いて、大口を開けてペットボトルを咥内の奥へ突っ込んでゆく。喉仏はひくりひくり揺れて、中身も徐々に減っていた。飲み口が相当奥に入ったのか、ごほ、と噎せて、口の隙間からカルピスソーダと唾液がぼたぼた落ちる。吸いつきながらも口からペットボトルを引き抜いて、べたべたになったそれに頬ずりまでしてみれば赤い顔もべたべたになる。てらりと光る唇からはやはり唾液とカルピスソーダが顎まで伝っていた。そしてまたもペットボトルを舐め上げた土方は、ふと背をしならせてみせた。吐息も乱れ始めて、見れば畳んだ脚の踵で自身の股間をぐりぐり擦り上げている。思わず土方、と呼ぶと本人はペットボトルと俺あるいは高杉もしくは沖田の区別がついていないのか何なのか、兎に角目を閉じた儘顔を歪めて喘いだ。こんな声聞いたことない――のはどうやら俺だけではないらしい。俺達のマドンナは再びペットボトルを口に咥え込んで、踵で股間を擦りながら次第に腰も揺らし始め、口から鼻から止め処なく欲に塗りたくられた声と息とを漏らし続ける。AVの声なんかもう誰も聞こえてはいないだろう。やがてひときわ高く長い声で鳴いた土方がびくり、びくりと背を反らし、ペットボトルを取り落として床にくたりと横向きに倒れた。ペットボトルが残った中身を床にしゃわしゃわぶち撒けて、そこへ土方の顔がべちゃりと落ちる。呼吸は荒い。見れば土方の股間はぐっしょりと濡れていた。どうやら俺達は自分だけのものと思い込んでいたマドンナの擬似的フェラと自慰を目の当たりにして仕舞ったらしい。魅入られたようにふらりと、沖田が立ち上がる。待てよ、と高杉が声を上げた。俺も慌てて腰を浮かす。各々限界であるようだ。土方さんあんた、沖田が声を掛けると土方は上体を起こし、液にまみれた顔で俺達三人をゆるりと見上げて、笑う。じゅ、ん、ば、ん。――あ、こいつ、既に素面だ。





ついったろぐでFさんへのおわび文。
何が言いたいかと聞かれれば高杉君恩田陸読む子だったらいいなとかそんなん


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