銀土 | ナノ







大学に来てまで何をしているんだこいつは。カレーを口に運びながら見る正面、チョコクリームメロンパンというチョコパンなのかクリームパンなのかメロンパンなのかよく解らないまあとにかく甘いなにかを片手に学食の机上に雑誌を広げて読んでいる、もとい眺めている。本日発売のサブカルチャー全般を扱う雑誌いわゆるオタク雑誌を購買に頼み込んで毎月販売させるに至らしめたこの馬鹿は今月もしっかり購入、授業はおろか昼食までも疎かに読みふける始末。おい飯くらいちゃんと食え。言えば、ごめん今俺ドロンジョ様で忙しい、とすっ飛んだ返答。やっぱすげえわこの会社のクオリティ、これぞドロンジョ様だよ俺はドロンジョ様に様をつけねえ奴と不二子ちゃんにちゃんをつけねえ奴は許せないね、このシリーズで不二子ちゃん出ねえかなあ何で先にミサト出したかなあ、そういやミサトで思い出したけどセーラームーンて月に代わってお仕置きよって決め台詞アニメじゃ毎回言ってたけど原作じゃ十回も言ってないんだよ知ってた? あとあれ今をときめく北川景子は実写版セーラームーンのマーズ役だったよねえいやあ三次元は何が起こるか解らんわ、まあ稲垣吾郎まで仮面ライダーやっちゃうこんな世の中じゃ何起こっても不思議じゃねえわなその点二次元は安泰だ、しかし現代の腐女子で元祖腐向けのガンダムウイングを知らねえ奴が多いってのが嘆かわしいのも事実だな別に腐女子を嫌いたいわけでも肩持ちたいわけでもねえけど。つらつら語ってページを捲る。ほとんど意味が解らない、もとい解りたくもない。そんなに二次元好きなら二次元に引っ越しやがれ――俺のいない二次元に、との付加は飲み込んだ。と、眼前のオタクはいやいやと首を振り振りパンを齧る。そうもいかないんだ俺は遊馬崎君とかみたく完璧に達観出来ないからさあ、三次元も好きなんだよ面倒くせえけど何が起きるかわかんねえじゃんそこが面白え二次元は客観視しか出来ねえし、言ってページを一枚戻す。このドロンジョ様はおっぱいでけえし脚長えし俺の好きなポージング黙ってやってくれっけど、目の前のおっぱいもねえしまあ脚は長えけど言うこと聞かねえお前のほうが面白えんだもん。言葉が終わるか終わらないかの時、ひぃっ! と突拍子もない叫びを学食に響き渡らせ衆目を集めたのはこの俺だ。数多の視線を感じながら睨む正面は相変わらず雑誌を見ている――が、その、テーブルの下の片脚の先が、ぐりぐり、と俺の脚の間を擦っているのだ。こいつ、……こいつ! こちらの反応を察しているのか否か、やっぱガンシップかっけえなぁこのデリンジャーくささ堪んねえ、などと誌面に呟いている。……そう、そうだ、三次元は二次元と違って何が起こるか解らないんだよ――己の、身の上にはな! 俺はがたりと立ち上がり無表情に若干の加虐心を滲ませた男の顔面に、食べかけの、半分以上も残っている俺が金出して買ったカレーを、全力で、投げつけた。衆目のざわめきが何て心地好い。せめて靴は脱ぎやがれバーカ! 言い捨て肩で風切り学食を後にする。――この、俺、土方による顔面カレーライススパーキング事件にくわえ、まあある意味公開スカトロ? とコメントした坂田はしばらく、学食の伝説になってしまったらしい。カレー好きの皆々には坂田の代わりに俺が謝っておく。





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ついったろぐ。
Mさんリクアニヲタ銀×土 坂田君が語ってる気持ち悪い内容は私の嗜好→つまり私が誰よりも気持ち悪い


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