「愛してる」 「……それはいいかげん解った、何百回も言われれば流石に。――が、」 「が?」 「俺は今のところお前を好きでもなんでもない。むしろお前は取っ捕まえるべき存在なわけだ」 「ンなの端っから解り切ってるこったろ」 「俺としては仕事場を荒らされたくないし仕事を増やされたくもねえ。――そこでだ」 「何だよ」 「お前を好きになることにした」 「……。は?」 「差し当たって、お前を飼う」 「オイ待て何だその結論は」 「猫、犬、鳥――あるいは爬虫類とか虫とか、最初は興味がなかったり嫌いだったりした生き物も、世話して一緒に暮らすにつれて愛着沸いたりするだろ」 「……それはまわりくどい同棲申告と捉えていいのか」 「よくねえ。お前はペットで俺は飼い主」 「何でそうなる」 「餌は朝昼晩やるしたまには構ってやるよ。ただし室内飼いだからな、首輪もリードも趣味じゃねえから着けねえけど、勝手に外出るなよ。――お前が外出しなければ犯罪の未然防止にも繋がるわけだし」 「オイ土方」 「あ、それから間違っても御主人様とか呼ぶなよ気持ち悪いから」 「……そんな生活をこれから送るとして、お前は俺を愛せるのか?」 「努力はしてみる。だからお前も家出するなよ、騒ぎになったら事だ――解ったな」 「……」 「返事は?」 「……。わん」 「……何だよ犬かよ。俺猫派なのに最悪だ」 「それこそそのうち好きになるんじゃねェのか」 「まあそれも努力してやる。あ、言い忘れてたけどお前ちゃんと朝起きて夜寝ろよ? 夜行性になって俺の寝込み襲おうとでもしたら即刻屯所に連行するからな」 「……わん」 惚れた弱み 何がどうしてこうなった! * * * さいごのわん、は駄目杉さんのなけなしのプライド |