ひとでなし | ナノ



双子というのは一卵性二卵性同性異性問わず同じ学校に入れば必ず別のクラスに振り分けられる。十四郎より五分早くこの世に生を受けた姉はその黒髪を染め抜くこともなくパーマを掛けるでもなく毎日後ろに一括り、制服もセーラーのスカーフを緩めるでもなくスカートを短くするでもないという極めて優等生としてはステレオタイプと言っていい風体で隣のクラスに籍を置いている。十四郎もまたほぼ同様で、スカーフの代わりに学ランの襟に入っているカラーを抜くこともなければズボンを腰の位置まで下げて履くこともない。二人の間に性別以外の相違はあまりなかった。優等生のなりをしている癖に言葉遣いは乱雑で、時々授業から消え失せ、更に時々煙草の匂いを漂わせている。ただし一緒に行動するのは稀で、偶然二人で歩いているところを見掛けられるとしばらく眺められる。見せモンじゃねえよ、尖った声音と鋭い視線でオーディエンスを射殺すのはやはり共通するところではあった。
だからだろう、双子といえば真逆の性格をしているという先入観を裏切っている二人の片割れの担任をしている教師坂田が、クラスの垣根を越えて十四郎に興味を示したのは新学期が始まって幾らもしない頃だった。次いで生徒と教師という関係を逸脱したのはひと月後、いわゆる一線を越えたのは――思い出したとて意味もないことだ、この事実とて姉も同様だろうと、十四郎は夕闇間近の屋上の貯水タンクを背に空を見ている。上向いた彼を姉は特段の感情もなく観察していた。
お前今日銀八とやっただろ。淡々と訊く姉に十四郎は無言の肯定を示した。姉は尚も表情を変えず、ポケットから煙草を取り出して一本咥える。赤マルのボックス。十四郎は銘柄こそ同じもののソフトケースを愛用している。慣れ親しんだ煙が十四郎の鼻を通り抜けた。
スキモノだな、生徒指導室でなんて。言う姉に十四郎は億劫を隠そうともせずに、お前が言うな、と返す。俺の前に、お前もアイツとやってた癖に。最ッ低、覗いてたのかよ。誰が覗くかよ、まあ順番待ちはしてたけど。聞いてはいたわけだ? だからどうした、挿れて貰えなかったのが悔しかったってか? ――そこで姉はあからさまに鼻白んだ。きっちり履かれたソックスの片脚を脱ぎ棄てて十四郎の下肢にその脚を載せる――指が、掴むように曲げられた。挿れては貰えなかったけど舐めては貰った、どういう気分だよ、姉貴の股の血飲んだ口でココ咥えられたってのは? お前も覗いてたんじゃねえか、変態女。
姉の指はファスナーと布を巻き込んで揉み続けている。あいつがコレ好きだから今日もやってやりたかったけど駄目だった、血ィ飲みてえっつうから、穴ん中まで。つまり抜いてもやれなかったんだな可哀想に。でも見物だったぜ、顔中、眼鏡まで血塗れにした銀八。中々に猟奇だろうな、気色悪ィ。そこで二人ようやく少しだけ嗤う。
このビッチ、言ったのは姉だった。ビッチは女に言う言葉だろうがビッチ。スラングは習わねえモンでね、咥えていた煙草を十四郎の口に移しながら姉はファスナーに指を掛ける。アイツが舐めたの寄越せよ、どうせ反応してんだから。面倒臭えな、そんなに欲しかったのか。……好きな男を弟に半分取られた姉の気持ちを多少は察しろ。上向いて来た十四郎のそれを今一度脚の指で突いてから、姉は生理用のショーツを脱ぎ棄てる。腿の間を濃い赤が伝った。
この感触、嫌なんだよ、異様にねとついてて臭えし。うるせえ黙れホモ野郎、女に抜いて貰えるだけ感謝しろ。ぐずぐず音を立てながら腰を落とす姉の顔は少し青褪めていた。痛むのか、やっと案じる科白を吐いた十四郎に姉は、好きな男に挿れさせないくらいには、などと笑う。十四郎は煙草を地面に潰して、自分より線の細い腰に両手を添えた。絡んで来る経血は夕闇の下でも鮮やかに映えている。





jさま発案の八土前提土方姉弟(姉ヤンキー気味)を私が書いたらこうなった
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -