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「――こちらの部活動は発足及び保持の条項その一部員在籍数の確保その二明確な活動内容の成績報告いずれもなされていないと生徒会が判断した為本日は状況改善の督促に参りました来週月曜また伺いますのでそれまでに条項を満たして戴きます出来次第生徒会に連絡を入れてくれても構いませんただし再来週の月曜までにそれらが為されなかった場合は即刻廃部手続きを決行させて戴きます。以上」
「揚げ物をする際は油から目を離してはならぬぞ副会長」
「割烹着似合うねー副会長」
「……。人の話を聞けてめえら」

部活動運営警告に訪れた筈の生徒会副会長土方は目下ガスコンロに向かっている。何で今自分が割烹着を着込んで解凍した太刀魚を天麩羅にしているのかは本当に解せない。そう、数分前土方の意識をしばし飛ばした原因の片方である太刀魚である。ちなみに原因のもう片方は土方の巴投げでやはりしばし意識を飛ばした。部室の入り口から奥突き当たりの窓まで吹っ飛ばされた結果ガラスが一枚割れて仕舞った。今思えば双方怪我がなくてよかったものの、副会長がガラス割るってどうなのかなそもそも一生徒に巴投げとはいかなるものかと意識を取り戻した部員その一坂田と自称副部長桂に脅迫がごとく言いくるめられて今に至る。手元からは揚げ油の立てる小気味好い音と香ばしい匂い。――ここは断じて料理研究会(彼女らは勿論要項を満たして活動している)でも家庭科室でもないというのに。

「何で俺が……」
「いやだって食べ物は大切にしないと」
「じゃあそもそも遊び道具にするな! 何で武器なんだよ!?」
「ほら太刀魚って刀って字が入ってるじゃんだから刀みたいに使えるかなって素朴な疑問を」
「そういうことだ。して、副会長が何用か」
「だからそれは今言っただろうが!」
「平たく言ってよ解んねえよ。あんな難しいこと捲くし立てられても」

会議テーブルにかたや顎を起きかたや両手指を組み、パイプ椅子に座る二人を振り返って、何とも言えない疲労を感じて向けられた視線をねめつける。

「――脅しに来た。この儘だと三週間後にここは廃部だ」
「えっ何それどんな横暴!?」
「横暴も何もねえよ。今見た限りじゃ部員は二人だな」
「あーいい匂いして来た。ヅラ冷蔵庫から大根おろし出して。あと醤油どこだっけ」
「だから人の話を」
「ヅラじゃない桂だ。天麩羅には塩だろう外道め――副会長、お言葉ではあるが部員は四人いるぞ」

椅子から立ち上がり、何故かカラフルに塗り潰された(多分ペンキだ)床を歩いて行き着いた小さな冷蔵庫を開けながら桂が土方に言う。菜箸で切り身の一つを油切りしていた土方は怪訝と眉を顰めた。

「四人だと?」
「言っただろう、俺が副部長だと。そいつは――銀時には特に肩書きはないが、部長もいるしもう一人部員もいる。今は少し席を外しているだけだ」
「太刀魚解凍してから天麩羅に仕上げた今の今まで結構な時間が経ってる気がするんだがな」
「――まあどうせ、一人は来ないだろう。部長は戻る筈だ」

冷蔵庫を漁りながらの桂の言をオイルポットに揚げ油を注ぎながら聞いた土方は、ああようやく帰れる、と更なる虚脱感に見舞われた。

「じゃあ部長が来次第改めて話をさせて貰う。もう一人の部員も揃えて最低最悪でも再来週までに明確な活動方針を纏めておけよ」
「ふむ困ったぞ銀時。大根おろしが見当たらん」
「えっマジ!? こないだお前持って来てたじゃん、『桂小太郎の桂剥き限界に挑戦シリーズ』で。あれの残り全部大根おろしにしたよな?」
「その筈だったが。――ああ、万能ネギはあるぞ。この際どうだ銀時、『万能ネギの万能性に挑戦シリーズ』。万能ネギは果たして大根おろしの代わりになるか否か」
「あーそれいいな、そんじゃ副会長ちょっとその万能ネギ大根おろしにしてみて」
「出来るかよ! そして本気で話聞けてめえらよォ!!」




エピソード・2
部長が乗り込む五秒前





続く(はず)
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