部活動を発足かつ維持するにあたり必要な事項は以下二つ。活動と判断出来得る運営をしていること、部員が四名以上いること。いずれかを満たしていない場合は生徒会による督促と言う名の警告を与えられ、三度の警告を無視すると問答無用で廃部とされる。仏の顔も三度まで対三度目の正直、などという攻防は実のところそうそう行われるものではなくて、生徒会の面々もそんな要項を忘れていた程だった。 思い出したのは山崎で、それというのも目下問題視されているある部活の活動の一環に巻き込まれた所為であった。聞くに部員三名、活動内容は部長曰く「自由を謳歌するヤングメン」。何で英語なのかはよく解らない。 ともあれ「もう巻き込まれたくない」と涙する山崎と「俺昼寝しなきゃならねえんで」と行方をくらました沖田の代わりに土方は件の部室へ足を向ける。実際訪れるのは初めてだ。山崎の言からすれば要項いずれも満たしていないということであるから、今日が警告一回目となる。やる気があれば今日から一週間与える猶予の間にどちらかは満たすだろう。 ――面倒臭い。 そう思ったのは辿り着いた部室の扉を見た瞬間であった。小さな扉、貼り紙で示された部活動名は「チーム☆JOY」。あまりに頭の悪そうな名前に早くも独断で廃部にして仕舞いたい衝動に駆られるも寸でで留まり(実際貼り紙に指を掛けていた、少し切れ目が入った)中の様子を窺う。廊下側から覗ける窓はないゆえ気配と物音だけを探り――結局解らなかった土方は結局、憂鬱と面倒が混ざった心持ちを胸に抱いて三度扉をノックする。返答はない。 次に取った土方の行動は極めて常識的なものであった、筈だった。扉の前から室内を窺い、ノックを三度試み、返答がなかったということで扉を開ける、それだけのこと。――の筈だった、のだが。 「失礼しま」 「チェストオォォォ!!」 残念なことに――扉の向こう側は土方の、否世間一般の常識を排他せんとする異空間であったのだ。だって誰しも想像はすまい、扉を開けた瞬間に中に潜んでいた生徒が氷漬けにした太刀魚を振りかぶって土方の脳天をかち割ろうと飛び掛かって来るなど。 「よっしゃああ俺の太刀魚と戦術の勝ち――、ん、あれ?」 「……おい。人違い、ではないのか」 「あれこの人生徒会の――」 土方の常識と意識は限界を迎えた。 「おい、しっかりしろ。銀時無闇に身体を揺するな、頭を打ったのだぞ。太刀魚とはいえ」 「あ、そか、ちょ、ごめんごめん大丈夫!? 起きてって――」 ああ、まさか、よもや。 ……魚類を武器に気絶させられる日が来るとは思わなかった――。 勿論そんな思いは言葉にならず、フェードアウトした意識が浮上した次の瞬間、土方は片手に凍った太刀魚を持って己を案ずる顔をして見下ろして来た生徒を確認するや反射的にその身体を掴んで全力で巴投げを食らわしたのだった。 エピソード・1 投げ飛ばしたらガラスが割れた 渾身のギャグを書いてみることにした 続きますがいつまで続くかはわかりません |