| 家出して来た、珍しく失笑気味に呟かれた意味が量れなかったゆえ、こちらは顔を顰めるを得ない。訊くに、二月三日は碌なことがない、二つ名の所為で己を揶揄する者が多少なりとも動き、それにつられる者どもが常日頃から心得ておかねばならぬ士気というものを忘れるのだと。俺はもう形骸化した遺物でしかねえ、やっと気づいた、あの頃とはもう――そこで言葉を呑んだ土方の思うところをすべて察したわけではないが、せっかくの家出は派手に行くか、それもお前の申し出だしな、などと言って笑ってやった。さてこの家出、数日の小旅行となるか黄泉への旅路となるか、歩きながら考えるとしよう。軽んじられし鬼はみずから外へ外へと追いやられ、溜飲を下げ、獣は労せず満たされる。 駈け落ちのきっかけがすごく軽い高土ください |