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落陽の許、土方は坂田から離れて後ろを歩く。坂田は振り向きもせずに今日起こったくだらない話を道の果てへ向けて喋っている。土方は勿論相槌など打たないし、坂田もそれを求めていない。ただ知っているのは、長く延びた坂田の影を土方がずっと踏み続けて歩いていることだ。立ち止まって欲しい、振り向いて欲しい、――出来たら好きだと言って欲しい。己が坂田に出来ない総てを逆に向けて欲しいと、無言の儘に影を踏み続けている。坂田はそれを知っていて、その上思考は土方と変わらないから、立ち止まらないし振り向かないし好きだとも言わない。出来ることといえば――土方に見えないよう、頬を緩めることのみだった。――可愛いことしやがって、と。





銀土お題『可愛いにもほどがある』

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