安藤くんと由美ちゃん | ナノ
そのくちをふさいであげる

「安藤くんって友達いないよね」
「……ああ、そうだね」
「寂しい人!」


 あはは、なんて声をあげて笑う彼女はいやに嬉しそうで、吐き気がした。
 本当にそれを嬉しがっているんだ、こいつは。
 僕は暗にお前は友達以下だと言っているのに、嬉しそうに、楽しそうに。
 彼女の口は次々に言葉を紡いでいく。


「安藤くんは皆と仲良くしたくて堪らないのに皆皆から嫌われて、昔からずぅっとずうぅっっと苛められてていくら環境が変わっても必ず苛められて、愛された試しなんか一度もなくて、だってそうだよね、お母さんもお父さんもネグレクトしてるもんね、だから愛されたくて愛されたくて愛されたくて愛されたくて堪らないのに、どうしても誰も愛してくれなくて、皆から避けられて、だから私がその分愛して愛して愛して愛してあげてるのにまだまだまだまだ足りなくてもっともっともっともっと愛されたくてだったら安藤くんが誰とも喋らず顔も合わせず永遠に私だけのモノになってくれたらいくらでもいくらでもいくらでもいくらでもずっとずーっと安藤くんだけを見つめて求めて抱き締めて触れて想って慕って聞いて愛して食べてあげるのにあげられるのに」
「……ああ、そう」


 じりじりと詰め寄ってくる彼女は相変わらずドス黒い感情が渦巻いた笑顔を貼りつけていた。
 尚も狂ったように話し続ける彼女に少しだけ、感心する。それだけの気持ちの余裕があるのは、こんな可笑しな日常に慣れてしまったからだろうか。
 とうとう壁まで追い詰められた僕は、ため息をついて彼女の妙に艶めかしい唇にかぶりついた。ひたすらに口内を暴れまわって、貪って、貪って貪って貪って。
 気持ち悪いな、お前は僕に関係ないだろ。


「……っは、これで満足?」


 僕が君にレイプでもしてあげようか、お嬢様。

╋╋╋
(だから、何?)


2012.07.17

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