安藤くんと由美ちゃん | ナノ
Euglena

 無意味に生きる日々にぼんやりと疑問を投げかけた。珍しい、普段はそんなこと考えたところで、それこそ無意味だと見向きもしない話題だ。

 昨日はなにをしただろう。今日はなにがあっただろう。明日は、なにで過ごすのだろう。

 すぐに出てこないほどに、僕の日々はただ流れていくだけ。
 だけ、だったのに。


「安藤くんのこと、大好き」
「そう」
「そういう素直になれないところもアイシテル、えへへ、可愛いなあ」


 ああ、沈んでいく。
 体が重い。心が重い。アイシテルだなんて、スキだなんて、そんなことを言う人をどう信じろという。
 このまま堕ちるところまで潜り込んだら、屈んだら。もう、何も感じずに生きていけるのだろうか。彼女の不愉快な言葉すら栄養分にして、ただ無為に動くだけになれるだろうか。
 ただ、流れるだけの日々には戻れるのだろうか。
 彼女に心を荒立てられずに住む日は、もう来ないのだろうか。

 闇になれたらよかった。日向から、日陰に移るように、一瞬で消える暗闇に溶けることができたら。
 彼女は僕をじわりじわりと闇に侵食するだけで、不安定な黄昏時から動かしてくれはしないのだ。


「頼むから、消えてくれ」
「照れ屋だなあ、安藤くんたら」


 ああ、不快。
 それでも、この最低な人生が捨てられないのは、まだ、人間を、この世界を、この風景を。彼女に侵食される前の、無意味な日々を。

 僕は、アイシテいるんだろうか。

╋╋╋
(それでも暁を愛す)


Theme:溜め息と透明
2014.05.17

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