Tie Your Mother Down


※ダンテと箱入り娘





「なまえ、こっちだ」

こうやって抜け出すのは何度目だろう。なまえは差し出された愛する人の手を掴み、家の裏口からひっそりと家を抜け出した。

「ダンテ…!会いたかった」

家の敷地外に出た時、なまえは溢れ出る気持ちのままにダンテの広い胸にダイブした。すぐに彼の逞しい両腕に強く抱きしめられる。暖かくて頼もしいこの感触に心が一瞬で満たされてしまった。この瞬間が一番幸せかもしれない。

「そんなに俺が恋しかったのか」

不遜な言い回しだがその声音はとても甘い。「うん」となまえが答えればダンテのゴツゴツとした手が彼女の頭を優しく撫でた。

「今日は珍しく素直じゃないか」

ククッと笑いながらダンテは頭を撫でていた手で今度はなまえの顎をとらえ、ちゅっと一瞬、彼女の唇を奪う。

「あら、私はいつも素直よ?」

幸せそうになまえはキラキラした表情でいたずらっぽく笑う。この表裏のない笑顔や性格に惚れたのだと楽しそうに笑う彼女を見てダンテは改めて感じた。しかし照れくさくて、わき上がる気持ちを隠すように素っ気なく言葉を躱す。

「……見つかっても面倒だ、早く行くか」




ダンテが彼女の家からほど近いところに借りた部屋で、2人きりになる。部屋の鍵を閉め、寄り添ってベッドに腰掛けてたわいのない話を話す。

「一人暮らしは考えてないのか?」
「考えたことはあるけど……うちのあの両親が許すと思う?」

ロックなんて不良音楽だと考えているあの頭の堅い両親のことだ、ダンテと付き合っていることを今も許していないだろう。だからこそこうしてこっそり抜け出して逢瀬を重ねているのだが。

「無理だな」
「でしょ?初めてあなたに会った日だって、友達がこっそり連れて来てくれたのよ?」

彼と初めて会ったのは、ライブハウスだった。何のバンドでもいい、どんなライブでもいいから一度でいいから見てみたいと私が言っていたから。家を出てみたいと言った私に友達がこっそりと忍び込んで連れて来てくれたのが、アーヴァルが出ている小さなフェスだったのだ。

当時、浴びるような大音響とお酒のせいで、なまえはすっかり興奮しクラクラしていた。たまたまフロアで別バンドを見ていたダンテにぶつかったのがきっかけで色々話した。話の内容こそ覚えていないが、彼の全てが魅力的だったのは覚えている。そして何の縁か、ヘロヘロになった私を家までわざわざ送ってくれたのだ。

「とんだ不良娘だな。…安心しろ、早めに帰してやる」
「意地悪言わないで」

こうしてしか会えないのに、本当はもっとずっと一緒にいたいのに。酷い言葉だ。ぎゅっと彼の手を不安げに握れば、彼の大きな手が頭を撫でてくれた。

「…ただし、簡単に帰してやると思うなよ」
「望むところよ」

彼といられる時間が夜以上に長くなることはない。もっと一緒にいられたならどんなにいいか―――。苦悩しない日はない、となまえは悲しみを胸の中におさめた。

「堂々と会えますようにって毎晩願ってる」
「……そうだな。もっとマシな出会い方をしてれば良かったか」

そうすればなまえの両親もダンテを誤解しなかっただろうか。ライブ終演後に泥酔した私を家に送り届けてくれたのが彼だった。それでこっそり家を抜け出したのも彼のせいだと思われ、彼の派手に見える見た目もあって弁明しても理解してもらえないでいる。

「あなたのこと、まだ危険人物だって思ってるわよ」
「理解できんな。俺は平和主義者だ」
「…仕方ないわよ、頭が堅いからあなたの良さに気づくのに時間がかかるのよ」

何度説得しても自分たちの固定概念を崩すことはできないみたいとなまえが言うと、皮肉ったようにダンテは言う。

「フン、言っても分からんなら縛りつけて黙らせてやれ」
「平和主義じゃなかったの?」
「手を出さないんだ、平和的だろう」

拗ねた様子で言うダンテ。元々コソコソと動き回るのは好きではない。法に背いたことをしている訳ではないし、本当は堂々と会いたいのだ。もっと堂々と会える関係ならば……こうして2人で会える時間も増えるのに。


「……覚えておけ、お前の愛は全て俺のものだ」

ギッとベッドのスプリングが軋み、ダンテの身体がなまえに近づいた。そして優しく包み込むかのようにダンテのやわらかな唇が触れる。何度もくっついては離れくっついては離れを繰り返し、愛情を与えられる。

言われなくても、となまえは彼の背中に腕を回しながら心の中で呟いた。自分のこの気持ちをダンテ以外に向ける訳がない。出会った時からずっと彼の虜なのだから。

「ええ、出会った時からずっとね」

唇が離れ、彼の赤い瞳を見つめながら微笑めば、今度は首筋にキスをされる。腰に添えられた手が優しく上下に撫でた。

「…お前の全てを食らってやる。覚悟しろ」

そんなこと言わなくたって、元から私の全てはあなたのものよ。ダンテの唇と体重を受け容れながらなまえはシーツの海に沈んだ。




タイトルはQueenの曲名から。ブライアンって1番インテリだけど1番アホな歌詞書いてる。そしてやっぱりドラマーが1番好きです笑
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