I Don't Wanna Play The Game


「なまえ、好きだ」

家に呼び出されたかと思えば、告白をされた。あなたはいつだって言葉や仕草で私をからかう。今だってその指先で髪に触れる。他の女の子に触れたその指先で。

「はいはい」

なまえは軽く流す。セイジはどうせ本気ではないのだ。いくら片想いの相手とはいえ、これくらいで動揺していたら身が持たない。幼馴染みなのだからこれくらいは余裕で躱せないと他の女の子と同列に扱われる。

「俺のことどう思ってるんだよ」
「嫌い」
「その割には俺が呼んだら来てくれるじゃん」
「……用件は」

また何かの用事だろうか、と思ったなまえは手短に済ませたくてじとっとセイジを睨みつけた。すると、セイジは少し困ったような表情を見せた後、キリッとした表情に戻す。

「だから、好きだって。付き合ってくれ」
「無理」

特定の恋人を作らず、女の子をナンパしてとっかえひっかえしているのは知っている。デスティラールが売れてからは更に調子に乗っていると思う。

「俺の初恋なんだよ」
「……そう言ったら私がなびくと思ってるの?」
「違うのかよ」
「そういうところ嫌い」

そう言えば女は手に入ると思っているのだろうかと考えると、腹が立つ。なまえはばっさり言い捨てた。すると、本当のことなのにな、とセイジは寂しそうな表情で呟く。え、本当に初恋の相手は私だったの?今初めて知ったんだけど。

「なんで今更?」
「……色々な人と付き合って、最後はなまえがいいと思ったんだ」

つまりは、今まで何人も付き合って来たけどやっぱり最後は長年一緒にいる幼馴染が居心地いいってことなのだろうか。積年の片想いをこじらせている私としては飛びつきたいところだが、ちょっと都合よ過ぎないか?……考えてると頭痛してきた。なまえはふーっと長いため息をつく。

「あのね、私はゲームがしたいんじゃない。本気の恋しかいらない」
「本気で好きだって言ってんだろ」

一歩、セイジが踏み出してなまえに近づく。その一歩を皮切りにゆっくりとなまえの方へと歩を進め、距離を詰めて行った。彼女は後ずさりして距離を取ろうとしたが、背中がすぐに壁にぶつかった。

「俺にはなまえだけだ」

なまえを挟んでセイジの手がゆっくりと壁に添えられる。彼の真剣な瞳が彼女を見つめている。今まで見た事のないような表情に、なまえは気まずくなって視線を反らした。

「…っ、う、うそつき」
「嘘じゃねぇ」

こっち向けよ、とセイジの声が耳元で聞こえる。ロックスターを体現したようなチャラ男で有名で、女の子慣れしているこの態度。それなのに…本気で好き、なんて。信じられる訳がない。

「……じゃあ今まで関係した女の子と全部切ってくれるの?」
「当たり前だろ。俺はお前以外いらないの」

屈託なく笑うセイジ。この笑顔に今まで何度絆されそうになったか。だけど、そもそも本気なのか分からないし、簡単に返事してはいけない。

尚もなまえはいぶかしげにセイジを見つめていた。もしも彼が本気で言っているのなら、かなり冷たい反応かもしれない。でもやっぱり本気か分からない。長年一緒に居てもそれだけは分からないのだ。

「本気で?」
「本気。だから……俺と付き合ってくれよ、なまえ」

セイジの壁に添えられていない方の手が、優しくゆっくりとなまえの手を握る。今までこんなに迫られた事はなかった。こんな風に触れられるのも初めてかも知れない。もしもこの手が本当に本気ならば、握り返してもいいだろうか。なまえは暫く考えた後、口を開く。

「……いいわよ」
「!」

少しの沈黙の後、ようやくYesの返事をくれたなまえ。それがうれしくてセイジはなまえの唇を奪うようにキスをした。気づいた時には彼の顔が迫っていたなまえは避けるすべもなく彼の優しいキスを受け容れる。

セイジが一度唇を離し、もう一度角度を変えてキスをしようとする。しかしなまえは彼の胸を押したことでそれはかなわなかった。

「ちょっと!いきなりするなんて!」
「いきなりじゃねえよ。ずっと前からこうしたいって思ってた」

今度はセイジの指先が唇をなぞるように撫でる。その仕草にすら胸がキュンとしてしまうのをなまえは分かっていた。だからこそほだされる訳にはいかない。

「わ、わわ私は他の女の子と違って簡単にはいかないんだからね!」
「はは、そりゃ楽しいな」

なまえはプイッと顔をそらすも、繋がれた手は優しく握られたままだ。笑いながらもセイジは愛おしげになまえを見つめ、そっと抱き寄せた。




タイトルはW.E.T.の曲名から。ゲームのような恋はしたくない!って曲みたいなんですけど、どうしてこうなった。初のセイジさんでした。
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