When I'm With You


「今日はこのDVD見よっ!」

こんにちはーの次の言葉が、これだった。嬉々として好きなバンドのライブDVDを掲げてなまえはやってきた。愛らしい彼女が自宅に来てくれたのをうれしく思い、顔を緩ませながら徹平は彼女を部屋に迎え入れる。

「おう」

付き合い始めてからもう何度かこうして彼女は来ている。BLASTのメンバーと一緒に来たり彼女として1人で遊びに来たり、理由は様々だが。お邪魔します、と慣れた様子でなまえは狭い部屋の中へと進んでいく。

練習もバイトもない久しぶりのオフの日だ。なまえは徹平と2人きりで過ごせるのをとても楽しみにしていた。そしてそれは徹平も同じ気持ちだった。




なまえはDVDをセットし、いつもの場所に座る。そんな彼女を後ろから抱きしめるようにして座る徹平。隣同士で座って見るのもいいけど、やっぱりこっちのがなんとなく落ち着く。

「はー、すっげぇ落ち着く」
「私も。……最初は緊張したけどね」
「そうだな」

そう言って笑うなまえがかわいい。最初は恥ずかしいと言って彼女の身体がカチコチになってたのを思い出す。あの時はあの時でかわいかったけど。最初の頃を思い出して徹平は小さく笑った。

「あっ、今笑ったでしょ」
「いや、なんか懐かしいよなって」
「も、もう、いいでしょ!ほら見よ!」

そう言って再生ボタンを押してごまかすなまえ。彼女の好きなバンドの映像が流れ始まる。

そういえば、いつからこうして過ごしているだろう。確か、勉強がてらお互いの好きなバンドのDVDを一緒に見ていたのが始まりだった。しかし徹平にとってはいつしかなまえにくっつくための口実になりつつある。

音楽に聴き入り画面を食い入るように見つめる彼女の横顔を徹平は見つめる。こうして見てると、兄妹なのに宗介先輩とはあんまり似てねぇんだよな……。なまえはなんかこう守りたくなるようなかわいさがあって……。


「徹平くん、ちゃんと見てる?」

なまえを見つめていると、不意に彼女が振り向いて自分の方を見上げる。ライブ映像を見てるかどうか確認された時はライブ映像なんて見ていなかったから徹平はドキッとした。

「見てるって」
「本当にー?」
「本当だっつの」

やべぇ。見てなかったけど、怒らせたくなかったから見てなかったとは言えなかった。それに……お前に見とれてた、なんて口が裂けても言えねぇ……。

「じゃあ、同じドラマーとしてこのドラムの人どう思う?」
「あー……いいんじゃねえの?」

元々ハードロックが好きだから正直言うと、少し物足りない。技術は確かだが。好みじゃねぇってやつだ。はっきりとは言えず徹平は言葉を濁す。ところが、煮え切らない返事をすると、それを見透かしたのかなまえは聞いた。

「何その適当な返事。徹平くんはどんなの見るとテンションあがるの?」
「俺としちゃ、もっと激しいのが好きだけどな」
「なんかやらしい」
「お前が聞いてきたんだろうが!」

確かに誤解を招くような表現ではあったけども!至って健全な答えだ!

徹平はいつものノリで思わずツッコミを入れた。そうだ、見た目は似てねぇがたまにこういうことや天然みたいなことを言うのは宗介先輩の妹だと感じさせられる。

「ふふ、冗談だって」
「当たり前だろ」

わしゃわしゃと頭を撫でれば、髪がぐちゃぐちゃになる!となまえは頭を振って俺の手から逃れようとする。俺は逃さないように両腕で彼女をがっちり抱きしめる。俺も彼女の意識も既にテレビの画面からは外れていた。



「……普段はBLASTで一緒でも、こうして2人だけで過ごせるの、うれしい」

強く抱きしめられてバタバタと動くことはなくなったなまえの口からぽつりとそんな言葉が零れ出る。やべぇ、すっげぇうれしい。しかも照れたように微笑んだなまえの笑顔がかわいい。愛おしくてたまらない。

「……俺も」

幸せを噛みしめるように徹平はなまえの首筋にぽすっと顔をうずめた。きっと幸せってこういうことを言うんだろうな、と思いながら。




タイトルはSheriffの曲名から。休日はお家デートでDVD鑑賞してたらいいな。
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